アニサキス予防に塩、ワサビは有効? 福井県内で食中毒が急増、目視で確認できる特徴は

食中毒の原因となるアニサキス(瀧澤准教授提供)

 魚介類の寄生虫、アニサキスによる食中毒が福井県内で急増している。専門家は、海洋環境の変化が原因の一つの可能性があると指摘する。鮮魚の販売現場は対策に追われ、被害の抑制に向けた研究も進められている。

 県と福井市保健所のまとめによると、県内のアニサキスによる食中毒は2021年まで年間3件前後で推移していたが、22年は11件に跳ね上がり、今年も4月28日時点で既に8件発生している。

 福井県立大学海洋生物資源学部の瀧澤文雄准教授(魚類免疫学)は「アニサキスの生息域に変化が見られることが一因」と指摘する。

 瀧澤准教授によると、日本近海で取れる魚に寄生するアニサキスは主に2種類あり、食中毒を引き起こす可能性が高い「S型」は太平洋側で多かったが、近年は日本海側でも見られるようになった。「海水温の上昇による魚種の入れ替えや、アニサキスの卵を持つイルカやクジラの回遊ルートの変化が影響しているのではないか」とみている。

 被害の急増を受け、県内のあるスーパーは、購入者にアニサキスのリスクを周知し、冷凍などの対策を取るよう呼びかけている。食味を損なわない瞬間凍結機の導入も検討している。別のスーパーは、一度冷凍した魚の刺し身の販売を促進しているほか、アニサキスを見つけやすい色のまな板を使用。アニサキスを光らせるブラックライトも導入する方向だ。

 瀧澤准教授らは、養殖魚の餌に着目し、被害を減らす研究に取り組んでいる。県外で取れたサバに、炭焼きなどの過程で出る木酢液をまぶした餌を2カ月与えたところ、S型のアニサキスの活動が比較的早く弱まることが分かった。今後、木酢液の濃度や給餌期間などを変えながら、さらに効果を検証するという。

 将来的には、魚の体表を調べて寄生の有無を判定する手法の開発も視野に入れる。「海水の成分などから“アニサキス警報”を出すような仕組みをつくるなど、安心して魚を食べてもらえるように研究を続けたい」と話している。

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有効なアニサキス被害防止策は

 大型連休中は、家族や友人グループで、すしや刺し身を食べたり、バーベキューを楽しんだりする機会が増える。アニサキスによる食中毒を防ぐポイントを、県医薬食品・衛生課がホームページで紹介している。

 有効なのは加熱と冷凍。アニサキスは60度の加熱で数秒、70度以上では瞬時に死滅する。マイナス20度で24時間以上冷凍するのも有効だが、家庭用の冷凍庫では難しい場合があるという。アニサキスの幼虫は白色の少し太い糸のように見えるのが特徴で、加熱や冷凍ができない刺し身の場合は「異常がないか目視で確認してほしい」(同課)。

 新鮮なものを購入し、すぐ内臓を取り除くことや内臓を生で食べないことも重要。料理で使う酢や塩、しょうゆ、わさびなどは予防効果がなく注意が必要だ。

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