聴覚障害者と意思疎通 アピア(富山市)が講習会、音声文字化アプリ活用

実際にアプリを操作しながら使い方を学んだ講習会=アピア

 店舗や自治体の窓口で、耳が聞こえにくい高齢者や聴覚障害者と円滑にコミュニケーションを取れる環境をつくろうと、富山市稲荷元町でショッピングセンターを運営するアピアは、音声を文字化できるアプリの普及に乗り出した。4月末に行政関係者らを招いた講習会を初めて開き、アプリの使い方を説明した。県内では導入事例が少なく「どこにでも字幕がある社会の実現に貢献したい」としている。

 活用するのはシャムロック・レコード(東京)が開発した音声認識アプリの「UDトーク」。スマホやタブレットに向かって言葉を発すると、話した内容が文章で表示される。文字を打ち込んだり、外国語に翻訳したりすることもできる。

 東京都が知事会見の配信に取り入れたほか、大手企業が難聴の社員のために社内会議で活用するなど千以上の団体が導入している。昨年に放映されたテレビドラマ「silent」の中で使われたことがきっかけで、一般のユーザーも急増したという。県内で導入を公表しているのは、教育機関4カ所とアピアにとどまり、行政や民間企業では活用が広がっていないのが現状だ。

 アピアは3年前にタブレットを導入。新型コロナの影響で活用できる場面が少なかったが、今後は普及に本腰を入れる。多くの人に利用シーンを目にしてもらうことでアプリを周知する考えで、同社の広野修一郎さん(71)は「店内の大型テレビに音声案内を字幕付きで映したり、インフォメーションコーナーでお客さんと会話する際に使ったりしたい」と話す。

 講習会には行政関係者ら約20人が参加。UDトークを使った聴覚障害者支援に取り組んできた上村深葵(みき)さん(24)=富山市=が講師を務め、使い方や特長を解説した。6月には一般向けの講習会も開く予定だ。上村さんは「手話ができる人を増やすことも大切だが、機械の力を借りれば幅広い場面で簡単にコミュニケーションを取れるようになる」と強調した。

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