眼下にずらっと並ぶ新幹線 大阪モノレールの絶景に喝采

 

  【汐留鉄道倶楽部】道路の上を走るモノレールはどこも眺めがいいものだが、大阪モノレールには鉄道ファンをうならせる格別の眺めがある。狙うは大阪府摂津市にある東海道・山陽新幹線の車両基地であるJR東海の鳥飼車両基地だ。モノレールは基地の西側の大通り上を高架で走り抜けており、広大な基地全体を眺めるのに高さと距離、そして角度が絶妙なのだ。

 

大阪モノレールの車内から撮影した東海道新幹線の鳥飼車両基地。左方にJR貨物の大阪貨物ターミナルも見える

 コロナ禍の行動制限が少し解けてきた今年2月、久しぶりに大阪の万博記念公園(吹田市)に行く機会があり、最寄り駅の万博記念公園駅を拠点に、半日、モノレールの走りっぷりを味わってきた。

 大阪モノレールは東京モノレールなどと同じレールを跨がる「跨座式」と言われるタイプ。大阪市街地中心部からだいたい10キロ圏を、環の上部分を成すように走る。北西の起点は大阪空港駅で、千里ニュータウンを通って南下、淀川を越えた門真市駅までの本線が約21キロ。途中の万博記念公園駅から分岐して北郊の新都市「彩都」に至る彩都線が約7キロ。計28キロは国内の営業中モノレールとして最長を誇る。

 

本線から彩都線が分岐する万博記念公園駅東側の走行路の切り替えは見応えあり

 岡本太郎作の「太陽の塔」の顔の正面が見える万博記念公園駅から門真市駅行きに乗り込み、4両編成の先頭車、それも運転席のすぐ後ろ左側に座った。運転台が一般の鉄道と逆で右前部にあるので、左の席の方が前面展望を楽しむにはいい。10分ほど走って摂津駅をすぎると高層ビルも少なくなって展望がいよいよ開けてくる、すると左側にお目当ての新幹線の車両基地が見えてきた。あるある!その数15、6本か。長さ約400メートルの16両編成がずらりと並んだ全景を見渡すことができて、実に壮観だ。これら車両群の彼方にも、たくさん編成が留置されているのが見える。ざっと見た感じではほとんどがJR東海と西日本の主力となっているN700系の仲間のようだ。

 

淀川にかかる鳥飼大橋の5連アーチは見どころの一つ(写真は摂津市側から守口市側を望む)

 モノレールは俊足で新幹線とお別れし、南摂津駅を過ぎると今度は淀川を渡る鳥飼大橋が見えてくる。5連のアーチからなるこの橋もなかなかの景観で、写真撮影のためいったんホームに降りて、乗ってきた列車をやり過ごすことにした。

 モノレールは大阪中心部から神戸、京都、奈良の各方面に放射状に伸びる鉄道各線をつなぐ環状交通の使命を帯びており、門真市駅の先では近鉄奈良線に接続する約9キロの延伸工事が進められている。大阪府は完成を2029年目標としている。さらにその先、ぐるっと南へ回って堺市までの延伸構想もあるが、こちらは今後の利用実態などがかぎとなりそうだ。

 万博記念公園駅まで戻り、彩都線にも乗ってみた。こちらは緩やかな曲線を描きながら丘陵地をはい上がっていく感じで、周囲に緑も多くすがすがしい眺めだと思った。

 

新幹線公園に展示されている東海道新幹線の初代0系の先頭車両。左奥には電気機関車EF15も見える

 鉄道ファンにとって見逃せない沿線の見どころをご紹介しておきたい。鳥飼車両基地に隣接した貨物ターミナルの一隅に設けられた「新幹線公園」だ。ここには東海道新幹線の初代車両である「0系」の先頭車がボランティアらの手によって大切に静態保存・維持され、日常的に内部を無料で公開している。青とグレーが基調の座席シートはそのままで、懐かしかった。足の便がちょっと悪いのが難だが、摂津市は「新幹線基地を名所に!」「車は市役所の駐車場をご利用ください」と看板を立てて案内している。モノレールの摂津駅から歩道を歩いて15分、市役所からでも10分は歩くが、コンテナが忙しく移動する貨物ヤードもちょっとのぞけて、天気が良ければいい散歩になる。

 ☆共同通信・篠原啓一 鳥飼車両基地は実は新幹線の車内からもよく見える。新大阪駅から東京方面に向かうと、約7キロ走ったあたりで左方に見えてくるが、あっという間に通り過ぎてしまう。

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