巨大万華鏡で風景一変…井口雄介さんの空間芸術 金津創作の森で展覧会「Site-Sight-Scape」

新緑がまぶしい森の中に設置された巨大万華鏡。ペダルをこぐと回転する=福井県のあわら市金津創作の森美術館
杉の角材を立方体に組んだオブジェが森の風景を一変。くぐったり、間を縫ったりしながら杉木立を進む

 目の前の風景をシャッフルしてカラフルな模様に変える巨大万華鏡や、杉木立に点在する幾何学的な形をした木のオブジェ。現代美術家の井口雄介さん(38)=埼玉県=の作品は、見慣れた風景を一変させるインスタレーション(空間芸術)。福井県のあわら市金津創作の森美術館で開催中の井口さんの展覧会「Site-Sight-Scape」(福井新聞社共催)は、新しい風景との出合いを体感できる。

 屋内外に設置した3基の巨大万華鏡。大きいものは長さ4メートル、一辺1メートルの三角柱。鏡の前に腰掛け、足元のペダルをこぐと目の前の鏡が時計回りに回転するだけでなく、万華鏡の装置と鑑賞者を乗せた台座ごと水平方向に360度回転する。

 屋外だったら風にそよぐ若葉の緑と空の青が、屋内だったら照明に彩られた展示室の壁面が鏡に映り込み、風景の上下左右をシャッフル。鑑賞者を複雑な模様の中に引き込む。万華鏡装置をどこに置くか。天気や風、明るさはどんな具合か。条件によって鏡が取り込む像は変化する。

 森の中の木のオブジェや、日光を反射する金属円盤の作品にも同じことがいえる。設置場所や天候が見え方や感じ方、空間認識を左右する。「環境に委ねられたアート」と井口さん。池の中に立つ鉄筋アーチも同様。無風で水面が波立たない時だけアーチが映り込み、丸いリングと錯覚させる。

 空間に身を置き、諸条件に身を委ねることで「新たな風景を発見してくれる鑑賞者がいてこそ成り立つアート」。作品ではなく、見る人が主役なのがインスタレーションだ。

撮影やSNS投稿OK、会期6月11日まで

 会期は6月11日まで(月曜休館)。一般600円、65歳以上と障害者半額、高校生以下と障害者の介助者無料。会場内は自由に写真・動画撮影とSNS投稿ができる。5月20日と6月11日午後2時から井口さんが作品解説をする。金津創作の森美術館=電話0776-73-7800。

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