こどもの日

 料理の味付けで“迷子”になってしまった妻が食卓で夫に尋ねる。「うすい? 濃い?」。夫が「大丈夫」と応じると、そばで聞いていた幼い息子がひと言。「お父さん、そういう時は“おいしい”って言うんだよ」▲別のご家庭の慌ただしい朝。「忘れ物ない?」と聞く母親に「忘れ物は、忘れてからでないと気付かないから今は分からない」と言い残して家を出る息子…▲何も狙っていない“天然モノ”の笑いには勝てない、と感じたり、抜群のワードセンスにむむむと脱帽したり。ネットに投稿された子どもたちの名言が楽しい。きょうはこどもの日▲最近は専ら「支援」とひと続きの言葉で語られることの多い「子育て」が、驚きや笑い、感動や発見に満ちていることを改めて思う。一方で、政府や自治体の施策が「支援」の範ちゅうにとどまっているうちは、少子化に劇的な変化は起きるまい-とも思う▲例えば「子育て」が「就労」に匹敵するような経済的利益をもたらすような施策が生まれたとしたら、状況はいくらか動きだすかもしれない。発足して1カ月の「こども家庭庁」はどこまで踏み込めるだろう▲同庁が掲げる「こどもがまんなかの社会」はまだ言葉だけが先行している。もちろん、子どもの成長を見守るような気長な視点には立てない。(智)

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