海辺のコンサート

 日曜日の昼下がり。佐世保の市街地に近い港の広場へ足を運ぶと、音楽の生演奏が聞こえてくる。音楽愛好家たちが「海辺のコンサート」を開いているからだ▲佐世保はジャズをはじめ音楽が盛んな土地柄。夜の街をうろついていると、あちこちの店から演奏の音が漏れてくる▲そんな音楽の街に影を落としたのが新型コロナウイルス。室内での活動ができなくなった。それなら屋外でと、ジャズスポット「いーぜる」のオーナー、前田和隆さんが提案したのが海辺のコンサート。2020年の秋に始め、以来、秋と春に開いている▲会場は海と県道に挟まれた緑地エリア。観客は樹木の周りの石段に座り、音楽を楽しんでいる。演奏中に救急車が通ることもあれば、船の汽笛が聞こえることもある。風が強い日は楽譜を飛ばされそうになる。屋外ならではのアクシデントも、前田さんが軽妙なトークで笑いに変える▲最初は「佐世保JAZZ」と銘打っていたが、ジャズに限ることもないと、今はタイトルからJAZZを外し、いろんなジャンルの奏者が出演している▲コロナ禍でも佐世保の街から演奏の音が消えることはなかった。春のコンサートは5月末まで毎週日曜日の午後に開かれる。潮風に当たりながら、生演奏を聴く。音楽の街に、変わらない時間が流れる。(永)

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