G7長崎開催記念 長崎大で国際シンポ、5月15日 世界銀行・米山 駐日特別代表にインタビュー

「グローバルヘルスの大切さを発信したい」と話す米山代表=世界銀行東京事務所

 先進7カ国(G7)保健相会合の長崎開催を記念し、世界銀行グループと長崎大が共催する国際シンポジウム「長崎から世界へ 国際保健課題の解決に向けて」が5月15日に同大で開かれる。世界銀行の米山泰揚・駐日特別代表に開催の意義などを聞いた。

-世界銀行の役割は。
 最初の主目的は第2次世界大戦後の復興。東海道新幹線の建設では世銀から必要な資金を借り入れるなど国際社会のサポートを受け日本も復興を加速した。1960年代以降は、独立を果たしたアジア・アフリカなどの旧植民地諸国の「開発」に重点化。国際開発協会(IDA)など5機関でつくる世銀グループとして「貧困削減・繁栄の共有」の2大目標を掲げ途上国の支援に取り組んでいる。現在はウクライナの復興にも注力している。

-長崎大とシンポを共催する理由は。
 途上国支援は経済インフラの整備と併せ、人々の健康の保持が重要な課題。新型コロナ禍で分かったことは、世界はクロスボーダーで人が行き来をしており、自国だけに高い医療体制があっても感染は防げない。パンデミックへの備えを強化し的確な対応を図るには、途上国での取り組みも重要ということだ。
 長崎大は早くからケニアに拠点を置くなど、熱帯医療の研究に端を発しグローバルヘルスに先進的に取り組んでいる。G7保健相会合に合わせて、グローバルヘルスのメッセージを発信する場として最適だ。

-長崎大では感染症研究施設「バイオセーフティーレベル(BSL)4」が完成し、本格稼働に向け準備が進んでいる。
 病原菌を研究するメディカルイノベーションには、医療技術のイノベーションだけでなく、人材の育成や財源の確保など複合的な取り組みが必要。シンポを出発点として、グローバルヘルス分野で長崎大と今後、どのような協力ができるか検討していきたい。
 一方で、シンポ開催を通じ、長崎の方々の間で世銀グループへの理解が深まることも期待。長崎大などで学んだ若い人たちが、世銀グループのスタッフとなることを目指し、門戸をたたいていただければ幸いだ。

-プログラムについて。
 15日のシンポでは、世銀の東アジア地域ヘルス担当者や、長崎大と連携するロンドン大衛生・熱帯医学大学院の研究者が基調講演。バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、ケニアの保健分野の政策決定権者から現場の声を聞く。15~17日にアジア・太平洋地域等の保健行政担当者を対象としたワークショップ(招待制)を予定している。

-県民にメッセージを。
 G7保健相会合の開催地として長崎はふさわしく、グローバルヘルスを進める長崎大と世銀グループが手を組むのは自然な流れ。長崎大そして長崎の町の力を貸してもらい、グローバルヘルスの大切さを日本全体に発信したい。

【略歴】よねやま・やすあき 東京都出身。東大法学部、フランス国立行政学院卒。1995年に大蔵省(当時)に入省。外務省中東アフリカ局、アフリカ開発銀行理事、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局などを経て、2021年8月より現職。

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