社説:こどもの日 「自分らしく」でいいんです

 <君たち女の子 僕たち男の子>と始まる歌を知っていますか。郷ひろみさんの「男の子女の子」。半世紀以上前のヒット曲です。親御さん、いや祖父母の世代かもしれません。

 「性」にまつわるさまざまな課題を見つめ直す取り組みが広がっています。女の子だから、男の子だからと性別で型にはめるのではなく、誰もが生きやすい社会が目標です。

 きょうは「こどもの日」。「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」とされています。

 でも、なぜ母親だけなのか。いろいろな事情から親以外が育てる子もたくさんいる。そもそも5月5日は男の子の成長を祝う「端午の節句」…。

 もやもやしてくるのは、今の時代と合わないからでしょう。祝日法ができたのは70年以上前の1948年です。

 社会は変わってきています。例えば色が多様になったランドセル。京都市内の百貨店の担当者によると、男の子が赤、女の子が黒や紺を選ぶことも多いそうです。

 草津市内の小学校は女子がハット型、男子がキャップ型だった通学帽をやめて、おそろいにしました。性別に違和感のある児童への配慮といいます。

 新しい小学校教科書は多様性の尊重を強く意識しています。登場人物の容姿や言葉遣いについて男女の区別をなくそうとする工夫もみられます。

 中学、高校でも男子校がフェミニズムについて講師を招いて話を聞くなど、ジェンダー問題を積極的に授業で取り上げるところが増えています。

 それでも「女らしく」「男らしく」との考えが根強い日本です。自分の気持ちに関係なく、「らしさ」を求められるとしんどいですよね。

 「子どもらしく」も、型にはまった決めつけでしょう。子どもだから元気よくと、いったい誰が決めたのか。口数の少ない子もいるし、詩人の金子みすゞが言うように「みんなちがって、みんないい」はずです。

 「自分らしく」でいい。そんな考えが広がれば、いじめもなくなっていくのでは。

 息苦しさを抱える子が増えていないか心配です。

 子どもの自殺が深刻になっています。10代前半の死因は2020年、21年と自殺が1位になりました。2年連続は戦後初めてです。22年の小中高生の自殺者数は過去最多の514人です。

 新型コロナ禍でずっと我慢してきた子はいませんか。つらければ助けを求め、自分が悪いなんて思わないで。受け止める大人がきっといるはず。こどもの日に、それだけは伝えたいと思います。

 自分らしく生きたいのは大人も同じです。「男の子女の子」は<一度の人生 だいじな時間>とも歌っています。

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