種もみ直播、省力化期待 ドローンで田植え 茨城・那珂 4農家が実証実験

省力化が期待できるドローンを使った田植え=那珂市門部

綿引農園(茨城県那珂市門部、綿引太一代表取締役)など4戸の米農家が、水稲生産技術研究所(愛知県豊明市)の協力を得て、ドローンを使って種もみを直接水田にまく「ドローン直播(ちょくはん)」の実証実験を行った。農薬や肥料の散布などでドローンを導入する米農家が増える中、田植えもドローンに任せるのは県内でも例がないという。スマート農業の導入によって後継者難にあえぐ農家の人手不足解消や、作業時間の大幅な短縮などが期待される。

綿引さんらは、県輸出米協議会県北・県央地区に加盟し、2017年から百笑市場(同県下妻市)を介した県産米の輸出に取り組んでいる。今年1月、兵庫県で開かれた研究会に海野敦之同地区会長らが参加。世界の人口増加による需要拡大に対応するための大規模化には、「ドローンによる効率化が不可欠」と知り、同農園に声をかけた。

4月28日、県内外からドローン直播の導入を検討する米農家も見学に訪れ、約5千平方メートル(5反)に田植えした。ドローンは事前に学習させた地形情報や範囲などを基に、飛行ルートを設定。「ブーン」と音を立てながら六つのプロペラが付いたドローンが水面から約2.5メートルの高さを飛行し、自動で種もみを水田にまいた。

ドローン直播の最大の利点は省力化。5千平方メートルを従来の田植え機で作業した場合、作業時間が約1時間かかるところ、ドローンでの作業では、途中1度のバッテリー交換を含め、離陸から15分程度で種まきが終了した。さらに、種もみを直接まくことで、約1カ月かかる苗の育成期間も省くことができ、人手や時間の大幅な節約になる。

まいた種もみは、水稲生産技術研究所がコシヒカリにインディカ米を掛け合わせて改良した「しきゆたか」。直播用にコーティングが施され、強い苗立ちや多収性、広い栽培地域などが特徴で、ドローン直播による大規模生産を想定した。コーティングは、発芽促進や鳥獣の食害防止、除草など地域や水田に合わせて施すことができる。

同研究所によると、ドローンの導入費用は、交換用バッテリーを含め約300万円。田植え機だけで300万円以上かかるため、導入費用だけでなく用途も幅広いため、ドローンは費用対効果に優れるという。

綿引農園でドローンの操縦を担当する佐藤翔大さん(34)は「今後はドローンから田植え機に戻ることはないと思う。今後は場数をこなし、操作に慣れていくことが必要」と語った。

同農園取締役の綿引桂太さんは「結果がどうなるか分からないが期待している。今までの機械と違い、ドローンの使い道は多い。古い常識にとらわれず、乗り遅れないように取り入れていきたい」と話している。

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