震度6強

 「始まり」と「終わり」の見当がつかないのが、地震と他の自然災害の一番の違いだ-という趣旨のことを熊本地震が起きた頃、この欄に書いた覚えがある。地震予知の研究はさまざまに続けられているが、大きな揺れの発生が事前にピタリと言い当てられた例は記憶にない▲強烈な地震は、いつだって不意に襲うもの-と考えていたが、大型連休の能登半島で起きた最大震度6強の地震は少し様子が違っているらしい▲この地域では2020年の暮れから活発な地震活動が続いていて、この2年半の間に観測された地震は300回を超えていたという。「いつ大きな揺れが来てもおかしくないと思っていた」と静かな覚悟を明かす住民がいた▲ただ、心構えがいくらか備わっていても、肝心の「いつ」は、分からないままだから、地震はやっぱり突然だ。地下深くの水が揺れを引き起こした可能性などが語られているが、メカニズムが解明されても揺れが収束に向かうわけではない▲今のところ、人的な被害は比較的小規模にとどまっているが、ひっきりなしの余震と強い雨で、現地は気持ちの休まらない時間が続く▲思いだす。この頃ちょいちょい揺れるね-県内でそんな会話をしたのは昨年末だったか。不安をあおるのは本意ではない。だが、備えは怠りなく。(智)

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