ドクダミの季節

 きょうは立夏で、暦の上では夏に入った。これから梅雨どきにかけて、ドクダミが白い十字の花をつける。毒や痛みに効くことから「毒痛み」が転じたとも、「毒を矯(た)める」、つまり毒を止める効能からきているともいう▲毒に痛みと、清らかな花にはなんとも気の毒な呼び名だが、この時季をよく表してもいる。「毒を矯める」とは言わないまでも、多くの人が心や体の疲れを癒やす大型連休と、その花の名はどこか重なる▲県内の観光地も、コロナ禍を経て、この連休はおおむね息を吹き返したと聞く。振り返れば3年前の大型連休は緊急事態宣言のさなかで、観光地や行楽地から人が消え、休業要請や営業の時短要請が出され、大方の人が連休を自宅で過ごした▲うろ覚えなので紙面を調べてみると、2年前の大型連休は多くの観光施設がまたも閉館となり、近くの土産品店の人は「心が折れそう」と嘆いている▲昨年はこれという制限はなかったが、主な観光施設の客数はコロナ禍前の6割にとどまった。大型連休だけを切り取っても、固く閉じた扉がそろりと開き、全開に近づく歩みが見て取れる▲きょう、あすは天気が崩れそうだが、客足はどうだろう。〈どくだみや真昼の闇に白十字〉川端茅舎(ぼうしゃ)。闇の3年間を経て、白い十字の花々の季節が巡ってくる。(徹)

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