女性用なし、共用と男性用のみ…渋谷区に新設された公衆トイレで論争勃発

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、渋谷区幡ヶ谷に設置された公衆トイレを巡る論争について議論しました。

◆誰もが使用できる公衆トイレに賛否両論

渋谷区では2020年8月から多様性社会推進のため、誰もが快適に使用できる公共トイレを区内17ヵ所に設置するとし、2023年2月、渋谷区幡ヶ谷に15ヵ所目のトイレを新設。このトイレは女性用がなく、個室の共用トイレが2つと男性用の小便器トイレが2つとなっています。

これに対し、渋谷区議が「誰でもトイレが2つと男性トイレ。渋谷区としては女性トイレを無くす方向性なのですが、私はやはり女性用トイレは残すべきだと思います」とツイートすると、SNSには賛否両論さまざまな声が。その後、渋谷区は自治体のWebサイトで件のトイレについて「共用トイレは性別に関わらず誰もが快適に利用できるもの」、「男性用小便器を用意することで共用トイレをさらに快適に利用できる」、「女性トイレをなくす方向性など全くない」とコメントしています。

株式会社ABABA代表の久保駿貴さんは、このトイレのデザインを見て「実際に中を見ていないので」と前置きした上で「子持ちの方や障害がある方の観点でいうと、使いやすさはどうなのか」と疑問を呈し、「"誰もが使いやすいトイレ”というところを反映させる必要がある、それが一番大事」と率直な感想を述べます。

臨床心理士のみたらし加奈さんは、このトイレが犯罪の温床にならないかと懸念。盗撮の危険性をはじめ、ホットスポット(犯罪多発地点)になるのではないかと危惧します。

「ホットスポットは入りやすく、見えにくい場所。ここもそうなり得る。そういう意味では、専門家が(設計に)入っていたのかという疑問はある」、「見る限りではデザイナーが男性しかいないというところに関して、統計的に犯罪に遭いやすい女性への観点が抜け落ちていたんじゃないか」と案じます。

◆いまや日本の公衆トイレも安全ではない時代に!?

渋谷区民の反応としては「女性と男性、両方使うのは、例えばカメラを設置されたり、公共の場所なので怖さはある。女性用トイレが1つぐらいあったほうが安心感はある」(40代女性・事務)、「生理用品の処理の仕方などもあり、男性などに見られるのが嫌なこともある。男性用・女性用・共用となっていたほうが、街中では利用しやすい」(10代女性・学生)といった反対意見がある一方で、「男女2人の子どもをトイレに連れていく場合、共用トイレだと近くで見守れるので、親目線からすると防犯・安全面では良い」(30代女性・看護師)、「共用トイレは赤ちゃんや子どもを連れている人が利用するイメージがあるので入りづらいが、全部共用であればそれしか入れないので全部共用のほうが良い」(30代男性・会社員)といった声もありました。

東京23区において、渋谷区は犯罪率の高さが大きな課題となっている地域です。キャスターの堀潤は、みたらしさんが言うような懸念があるものの、開かれたトイレにすることで多くの目が入り、犯罪の抑止に繋がることも考えられる一方、タクシー運転手などからしてみればサッと入って用がたせる男性用トイレは必須など、公衆トイレにもさまざまなニーズがあるといい、「どういったエビデンス、調査結果に基づいてアーキテクト(設計)されたのかは気になるところ」と話します。

金融アナリストの戸田裕大さんは、今回の問題に対してさまざまな意見があがるなか「論点を絞っていくと、女性の安全が非常に大切だと思う。男性からすれば共用のほうが使いやすいが、性被害に遭うのは女性が圧倒的に多い。そこにどう配慮していくかが重要」と持論を述べます。

しかし、そのために監視する人材を配置すれば費用がかかってしまうなど、現実的でないとした上で、戸田さんは「一歩引いて考えてみると、実は公衆トイレにおける安全を確保するのはすごく難しいのではないか」と指摘。「ある意味、公衆トイレの安全を確保するということは、昔からある日本の安全・安心な土台のなかで成り立っているものであり、それが今は難しくなってきているのかなという印象を受ける」と話していました。

◆多様性を促進する一方で分断が生じている!?

番組Twitterには「昨今の"多様性”って分断を生みまくりで大草原w」という意見が寄せられ、これを見た堀は「多様性と叫ぶなか、結局こうした対立を招いてしまう、これが本当に一番つらいところで、どうやっていくべきなのか」とさらなる意見を求めます。

ここで視聴者に共用トイレの必要性、今後も増やしていくべきなのか、Twitterのスペース機能を通じて問いかけると、「増やしたほうがいい」という意見が多くを占めました。

みたらしさんは、今回の新設されたトイレの件に関しては「女性用・男性用・誰でもトイレでよかったんじゃないかというのが、多くの方の結論としてあるのかなと思う」と慮りつつ、大前提として「性犯罪は絶対に撲滅しないといけない課題」と強調。

そして、そのためには性犯罪がどのような背景で起きたのか検討すべきところ、SNSでは今回の問題がトランス女性へのバッシングにつながっていることを悲嘆。「論点が別の方向に行ってしまっている」と嘆き、「特に専門家の間では犯罪は犯罪として防ぐことに関し、属性を批判するのではない観点で議論されていくことが大事」と訴えます。

久保さんは「トイレの周りをデザインし、良い環境、人が集まる場所にし、問題が起こらないよう努力していくことを話し合えたら良い方向に行くのではないか」と話していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

© TOKYO MX