島原観光 V字回復の兆し スポーツ合宿誘致、寒ざらし… 官民でおもてなし強化

23日にあったサイクリングイベントの参加者と記念撮影し、もてなす島原城七万石武将隊のメンバー(写真両端)=島原市城内1丁目、島原城

 水の都、長崎県島原市。新型コロナ禍で大きく落ち込んだ観光客数に今年、V字回復の兆しが見えてきた。市はコロナ後や来年の島原城築城400年を見据え「延べ宿泊客数年間20万人台復帰」を目指し、官民でおもてなし強化に取り組む。

 「よくぞ来られた!」-。外壁の改修を終え、天守閣の白さを取り戻した島原城に4月23日、張りのある声が響いた。声の主は島原城七万石武将隊の女性3人。1624年ごろ島原城を完成させたとされる「松倉重政」ら歴代城主に扮(ふん)し、サイクルイベント参加者らと記念撮影に応じていた。

■4年ぶり大台
 市の指定管理者として城を運営する「島原観光ビューロー」商品企画販売部長で武将隊プロデューサー、末續理さん(39)は「3月から国内客だけでなく、海外クルーズ船のバスツアーも訪れるようになった」と城を核としたにぎわい回帰へ手応えを感じている。
 国内でコロナ禍が始まった2020年1月以降、島原城も影響を受けた。5月の入館者数で比較すると、19年は1万7609人だったが、初の緊急事態宣言発令中の20年は287人と激減。末續さんは「宣言明けの1週間しか営業できず、入館料収入が約5千円という日も」と振り返る。一方、今年は行動制限の緩和などで2月から客足が戻り始めた。3月には1万1160人と4年ぶりに大台を回復した。
 市観光客動態調査によると、19年の延べ宿泊者数は約23万3500人。20年は35%減の約15万1700人で、21年もほぼ横ばい。22年は約18万7千人と改善傾向にある。
 市しまばら観光課は宿泊客増加策として「閑散期もまとまった誘客ができるスポーツ合宿などの誘致に力を入れている」と説明。3月末に島原で初開催された全国高校フェンシング選抜大会と強化合宿で選手ら計約千人が宿泊。今年1月からの3カ月だけでスポーツ関連の延べ宿泊者数は約6千人(速報値)とコロナ禍さなかの21年度1年間の実績(同5955人)を上回る見込み。

■知恵絞る企業
 地元企業も知恵を絞る。島原城から約1キロの浜の川湧水そばの寒ざらし店「銀水」。地場製菓業「玉乃(たまの)舎(や)」は21年度、市から運営を引き継いだ。22年度の1日平均来店者数は約65人で20年度比約1.2倍。年間売り上げも約2300万円(同約2.7倍)と好調だ。
 稲田智久社長(55)は寒ざらし単品だったメニューを「島原の菓子全体への関心を高めてもらいたい」と同業他社に働きかけ、島原銘菓とのセットの提供も始めた。これまで使われていなかった店の縁側にちゃぶ台を置き、湧水が見渡せる“特等席”を設けるなど、お客さま目線での運営見直しも進める。
 島原城築城400年のイベントの具体化についてはこれから詰めるという。ただ記念事業実行委の専門部部会員でもある稲田社長は「一過性のイベントに終わらないようにしなければ。既にある魅力をいかに磨き上げ、どう次世代に伝えていくかが鍵となる」と話す。

浜の川湧水に面した“特等席”で寒ざらしを味わう観光客=島原市白土桃山2丁目、銀水

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