内定取り消し 看護師の男性が病院提訴 病院側は「辞退」主張 長崎地裁

 合理的な理由がないのに看護師の採用内定を取り消されたとして、長崎市内の30代男性が同市内の総合病院に対し、労働契約の継続や未払い賃金の支払いなどを求めて長崎地裁に提訴したことが10日、関係者への取材で分かった。病院側は男性が内定を辞退したと主張している。提訴は4月27日付。
 訴状などによると、男性は1月10日付で採用通知を受け、「2月1日から働ける」と言われた。しかし、1月18日、病院側から「男性の前妻が院内で勤務している」などと告げられ、採用を取り消す考えを伝えられたという。同30日、内定取り消しを記載した文書を求めた際、病院側は男性が内定を辞退したかのように言い始めたと訴えている。
 男性側の代理人弁護士は、内定取り消しには合理的な理由が必要として「前妻が在籍しているだけで何らの補償もなく勤務開始2週間前に取り消すことは、社会通念上相当とはいえない」と指摘。男性は内定を機にそれまで勤めていた別の病院を退職し、家計維持が難しい状態という。
 男性は取材に「今後の転職活動で前の病院を辞めた理由を聞かれた際、信じてもらえないのでは」と不安視。長崎の医療業界での再就職を諦め、県外に転出することにしたという。病院側に対しては「誠意を示してほしい」と話した。
 病院側によると、男性に内定を出し、採用者名を病院内に周知した後、男性の前妻が働いていることが判明。男性に事情を伝え、辞退を願い出ると「仕方ない」と返答があり、内定はなかったものとして話を進めたという。担当者は取材に「男性が事情を理解して内定を辞退し、合意は得られたと認識している」と述べた。

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