社説:米銀の破綻 不安の連鎖を防がねば

 米国発の金融不安の連鎖を止められるだろうか。

 米中堅銀行ファースト・リパブリック銀行が先週、経営破綻した。米銀の破綻は3月以降で3行目で、資産規模として2008年のリーマン・ショック後で最大、米史上2番目の事態である。

 同時に米金融最大手のJPモルガン・チェースが買収を発表し、全預金と大半の資産を引き継いだことで大きな混乱は抑えられた。

 だが、3行と同じく大口預金の流出リスクを抱える銀行を中心に経営への不安はくすぶっている。

 預金者や市場の動揺を防ぎ、金融システムへの信用をつなぎとめる手だてを尽くさねばならない。

 米国では3月の中堅行シリコンバレー銀行(SVB)など2行破綻を受け、各金融機関の財務状況への警戒感が広がった。

 ファースト銀は、富裕層の取り込みで昨年末まで4年間に総資産が2倍強に急拡大した。預金保険で保護される上限25万ドル(約3400万円)を超える大口預金の比率が7割近くあり、SVBとの類似性に信用不安が直撃した形だ。

 JPモルガンなど米大手行から多額の預金支援を受けたが、3月末残高が前年比で4割減る急激な預金流出で命運を絶たれた。

 背景には、高インフレ抑制を掲げた米連邦準備制度理事会(FRB)の急ピッチの利上げがある。低金利時代の貸し出しや購入した債券の価値が下がり、多額の含み損が顕在化していた。

 バイデン米政権は2行破綻時、預金の全額保護を打ち出し、FRBも銀行の資金を支える融資新設など異例の対応に動いた。だが、SNS(交流サイト)を通じて不安は拡散され、スマートフォンから容易に預金は引き出された。ITが発達した中、いったん起きた信用危機に歯止めをかける難しさを思い知らされたといえる。

 FRBは直後に0.25%の利上げを決定。金融不安の山は越えたとするが、市場では次に経営が不安視される銀行の株価が下落し、予断を許さない。

 FRBは先月公表したSVB破綻の検証結果で、銀行の規模拡大の中で「監督側が脆弱(ぜいじゃく)性を十分に理解していなかった」と自らの不備を認めた。大幅な金融緩和とその正常化の進め方と調整力が問われていよう。

 これらは大規模緩和を維持する日本を含めて共通の課題だ。きょうから新潟市で開かれる先進7カ国(G7)財務相会合で、金融システム安定化と規制・監督の在り方の議論を深めてもらいたい。

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