“歌ネタ” 誕生の秘密 「メンバー」にまじめに密着! “独自の進化” を続ける同級生お笑いコンビ

歌ネタ「しりとり」
「♪リンゴ・ゴリラ・ラッパ・パセリ…」

ユーチューブの再生回数618万回。その数、まだまだ伸びている「しりとり」。アップしているのは、広島を拠点に活動する「よしもと広島」所属のお笑い芸人「メンバー」です。

2人が得意とするのは、音楽にのって漫才をする「歌ネタ」。そんなメンバーが目指したのは、オーケストラとの共演です。

メンバー 山口提樹 さん(36)
「テンポ、もうちょっと速くてもいいかなと思うんで…」

進化し続けるメンバーに、まじめに密着しました。

メンバーの 山口提樹 さん(36)と 潮圭太 さん(35)。コンサート前日、2人はリハーサル会場にいました。

メンバー 潮圭太 さん(35
「途中でちょっとだけ遅く感じたのは…、おれらが遅くなっていくのか…」

指揮者 中島章博 さん(神奈川在住)
「今のファーストバイオリンくらいの長さにしましょうか」

今回のコンサートのために結成された「メンバーズオーケストラ」。全国各地・海外からもプロの演奏家が集まりました。

アルバレギア交響楽団 フルート 菅野力 さん(ハンガリー在住)
「居住地はハンガリーです。一緒にお笑いを見ているような感じで楽しいです」

広島交響楽団 第1バイオリン 岩下恵美 さん
「これをどういうふうにオーケストラ用に編曲するのか、興味があって」

指揮者 中島章博 さん(神奈川在住)
「午前中、リハーサルやってみて、奏者のノリが違うんですよ。本当に楽しそう。クラシックも楽しいんですけど、違う楽しみ方ですよね」

全員が集まって細かく合わせていくのは、本番前日のこの日だけ…。メンバーにとっても最初で最後の本格的なリハーサルです。

メンバー 潮圭太 さん
「ぼくらの鳥肌がすごかったってことは、お客さんもすごいんじゃないかと思います」

メンバー 山口提樹 さん
「それにお笑い要素が入ったときにどうなるか、確かめに来てほしいと思いますね」

歌ネタ「迷惑行為」
「こんなやつを野放しにしてたら世の中がおかしくなる。だから、こんな相方を街で見つけたら近づいてって、おれはこう言う…」

漫才風のネタを音楽にのせる「歌ネタ」―。山口さんと潮さんは、歌ネタで人気急上昇のコンビです。音楽制作ソフトを使って、2人でネタとメロディを作り上げていきます。

メンバー 山口提樹 さん
「キーボードを買って、ピコピコ遊んでいたら、弾けるようになった。楽譜は読めないですね」

メンバー 潮圭太 さん
― 潮さんも?
「もちろんです」

メンバー 山口提樹 さん
「2人とも楽譜は読めない。おやじがクラシック好きで、母親が洋楽好きだったんで、CDめちゃあって、それを聴きまくってましたね」

音楽経験はないという2人。定位置に並んで黙々と作業を続けます。ネタは思いついたはしから書き留めていきます。コロナ禍にはユーチューブも開始。広島から斬新な企画を発信し続けてきました。

メンバー 山口提樹 さん
「これ、うまいですよね…。自分で出していくの、めっちゃ恥ずい…」

子どもの頃は物静かで、漫画家を夢見たという山口さん。似顔絵は今も特技の1つです。

潮さんは、ひょうきんなスポーツ少年。2人は、同じ島根県 益田市出身。小学校からの幼なじみです。

メンバー 山口提樹 さん
「ネタとかで文句というか、けんかにならん、ネタ作りで。けっこう “似た人物が2人いる” みたいな感覚があります、ぼくは。だから、どっちかに人気が偏ったりもないですし」

メンバー 潮圭太 さん
「高校からコンビ組んでいるので、だいたい同じ考え」

高校卒業後は、大阪にある吉本の養成所に入学。ところが半年も経たずに通わなくなったといいます。

メンバー 山口提樹 さん
「どんどん結局、都会にのまれていった感じですね」

メンバー 潮圭太 さん
「島根のいなかから出て、大阪に住んでしまうと、ああなりますよね。遊んじゃうっていう…」

アルバイト先の人と遊びに行ったり、ゲームをしたり…、そんな生活が4年ほど続いたころ、潮さんが、“ある言葉” を投げかけます。

メンバー 潮圭太 さん
「どこにも出さないけど、2人だけで動画を撮って、コントとかを撮ったりしていましたね」

メンバー 山口提樹 さん
「 “おれら、一番おもしろいんだ” っていうのは言ってたはずなんですよ。何もやってないくせに。そんな生活を4年ぐらいしていた、ある日、潮が、“おれら、このままだとやばいよね” みたいなことを言ってきて。やばいってなって。2人とも、そこを見ないようしていた。『楽しいし、ええか』みたいな生活をしていたときに、その言葉が来て…」

本気でお笑いに向き合おうと決めた2人は2010年、よしもと広島のオーディションに合格。新たなスタートを切りました。

独特の2人の歌ネタは、たまたま見た「ミュージカルアニメ」から思いついたといいます。

歌ネタ「しりとり」
「♪リンゴ・ゴリラ・ラッパ・パセリ…」

子どもたち
「めっちゃ、おもしろかった」

観客たち
「リズムがすっと入ってきて、心地いいなって感じ」
「リンゴ・ゴリラが頭から離れなくなって…」

2人の転機は、2018年に出場したテレビ番組「歌ネタ王決定戦」でした。エントリーした1000組以上の中からみごと優勝。おもしろさと音楽性が高く評価されました。

オーケストラとの共演は当時、2人が掲げた夢でした。動き出したのは1年前。神奈川在住のファゴット奏者・興津諒 さんとの出会いでした。

メンバーの2人 興津諒 さんに会って
「ありがとうございます。あのとき、メールをいただきまして」
「興津さんのおかげです」

メンバーのファンという興津さんが、2人に連絡をとったことが始まりでした。

ファゴット奏者 興津諒 さん(神奈川在住)
「(メンバーのインターネット)ラジオを聞き始めて、その中で『全編オーケストラで単独ライブやってみたい』という話があったので、ぼく、実現できるんじゃないかと思って、ラジオに送らせていただいて」

興津さんは、プロの演奏家を集めることと、歌ネタをオーケストラ用に編曲することを買って出たのです。最大の難関となる資金は、メンバーがクラウドファンディングを募り、全国から目標額を上回る500万円近くが集まりました。

興津諒 さん
「音楽とお笑いがかけ合わさったらどうなるのか、その化学反応を楽しみにしていただきたいです」

本番当日―。2人は、直前まで念入りに調整を続けました。

メンバー 潮圭太 さん
「加藤さん、薄明りってやつも見ていいですか」

メンバー 山口提樹 さん
「だいじょうぶそうです。なんとかなりそうです」

壮大なオーケストラの演奏と歌ネタの組み合わせに、満席の会場は冒頭から大きな笑い声。インターネットの同時配信と合わせると、観客およそ1000人の大舞台です。

観客だけでなく、オーケストラも巻き込んで盛り上がりました。

メンバーの2人 メンバーズオーケストラに
「お疲れさまでした」「ありがとうございます」

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第1バイオリン 野尻弥史矢 さん(東京在住)
「一瞬で過ぎたような、すごい楽しいコンサート、ライブでした」

ファゴット奏者 興津諒 さん(神奈川在住)
「本当に全部、1つの空気になって、大盛り上がりになって大興奮でした。本当に楽しかったです」

目指すは「広島から全国区へ」ー。2人は、これからも独自の進化を遂げていくつもりです。

メンバー 山口提樹 さん
「あるときから “場所は関係ない。どこでもいいんだ” みたいな感じに。いつか、広島から輝いてみせるっていう熱いものがありましたね」

メンバー 潮圭太 さん
「『東京に行かないと』という感覚をだいたいの芸人さんが持っているはずなんですけど、そうじゃないのも見せられんかねえっていう感じで…」

© 株式会社中国放送