「早く日常に戻りたい」 石川地震から1週間 上三川町出身小町さん

小町さん方近くの寺でひっくり返った井戸小屋=6日午後、石川県珠洲市(小町成美さん提供)

 石川県珠洲市で震度6強を観測した地震は12日で発生から1週間となった。同県によると、同市では同日までに1人が死亡し、35人が重軽傷を負った。住宅は15棟が全壊、15棟が半壊、704棟が一部破損したとみられ、同県内のほとんどの被害が集中する。栃木県上三川町出身で同市正院町在住の小学校教員小町成美(こまちしげみ)さん(41)の自宅も被災し、地震直後は足の踏み場もないほど物が散乱した。現在も余震が続く中、「早く元の日常に戻りたい」と強く願っている。

 5日午後2時42分ごろ。珠洲市を震度6強の地震が襲った。小町さんは同市から約50キロ離れた穴水町のコンサートホールで子ども2人と音楽鑑賞中だった。緊急地震速報のアラームが鳴り、1分ほど横揺れが続いた。在宅中だった夫佳史(よしふみ)さん(41)は電話で「大変なことになった」。車で家路を急いだ。

 車窓から見る地元の風景は一変していた。電線は垂れ下がり、家の瓦や壁が崩れ、道路に塀が倒れていた。正院町に近づくにつれ、損壊した家が多くなった。

 自宅の中は歩ける状態ではなかった。こどもの日に合わせて飾ったかぶとや本などが床に崩れ落ちていた。近隣でも家の窓ガラスが割れたり、八幡宮の手水舎が倒壊したり、地震の爪痕があちこちで見られた。

 自宅をやっと片付けた午後9時58分ごろ、震度5強の余震が発生。「大人でも立っていられないような大きな横揺れ」で壁紙に亀裂が入り、床は片付ける前の状態に戻ってしまった。

 発災から1週間。震度1〜4の余震が頻発し、不安は消えない。「子どもたちはわずかな揺れにも敏感になり、びくびくしている」。市内の災害ごみは少しずつ回収され、生活再建へ動きつつある。一方、「まだまだ落ち着かないし、今までの生活に戻りたい。家をなくした人もいるので、温かい支援を求めたい」と訴える。

 夫の出身地の同市に移住し今年で9年目。「海と山の景観が美しく、アートにも力を入れている」と地元の魅力を語る。「地震で珠洲を嫌いにならないでほしい。落ち着いたら観光に来てもらいたい」と呼びかける。「復興に向けて頑張っていく姿も見てもらえれば」。言葉に力がこもった。

地震直後の小町さん方。本やかぶとなどが床に崩れ落ち、ピアノの位置も大きくずれた=5日午後、石川県珠洲市正院町(小町成美さん提供)
手水舎が倒壊した小町さん方近くの八幡宮=6日午後、石川県珠洲市(小町成美さん提供)
小町成美さん

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