栃木県が「鬼怒沼」でシカ捕獲へ 高山植物の宝庫、食害防止へ対策

栃木県庁

 栃木県は本年度、日光市川俣と群馬県片品村にまたがる高層湿原「鬼怒沼」で初めてシカの捕獲に乗り出す。近年、希少な高山植物がシカの食害を受けるケースが目立っており、対策が急務となっていた。

 鬼怒沼は奥鬼怒温泉郷から山道を歩いて2時間半ほどの場所にあり、大小48の沼が点在している。標高は2千メートルを超え、高山植物の宝庫とも言われる。

 シカは積雪のない春から秋にかけて鬼怒沼に移動して来るとみられる。県や環境省、日光市などで構成する「日光地域シカ対策共同体」が昨年6月に現地を調べた際に、シカの口が届く高さの植物が消失する「ディアライン」が確認された。

 ラン科の植物で国内希少野生動植物種の「ヒメスズムシソウ」が食べられた形跡もあり、夏に花を咲かせるチングルマなども減っていた。

 県自然環境課の担当者は「数年前と比べてシカの影響が顕在化しており対応が必要」と話す。捕獲は民間業者に委託する予定という。この事業では鬼怒沼のほか、中禅寺湖畔の千手ケ原も対象地域とする。

 また、シカの捕獲数は本県西部から福島県会津地方にかけて多いため、県は同県とも連携。国の「効果的捕獲促進事業」交付金を活用し、昨年度に両県共同で策定した捕獲計画に基づき、捕獲を強化する。

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