IT人材80万人不足恐れ 時間単位で「社員シェア」

帝国データバンクの調査で、正社員の人手不足の割合が、4月として過去最も多い51.4%という結果が発表されました。こうした人手不足に関して、数年前から警鐘が鳴らされている業界があります。それがIT業界です。経済産業省の試算では、2030年までに40万人から80万人の規模で、国内のIT人材が不足すると懸念されています。この事態を改善しようと、都内の企業がIT人材をシェアする新たな取り組みを進めています。

机を並べて仕事をしている2人は、商業施設のディスプレイなどを手がける企業の経営管理本部長の峯さんと、この企業の社内情報システムのサポートを手がける「シェアード社員」の山崎さんです。山崎さんが所属する企業では、様々な企業のIT人材のニーズに合わせ、豊富な知識を持つ人材を業務委託の「シェアード社員」として、時間単位で「シェア」するサービスを展開しています。

山崎さん:「午前中からお昼過ぎくらいまでこちらに来て情報システムの仕事をし、自社に帰って採用広報の仕事を夜までして帰るみたいな流れで働いています」

山崎さんの同僚の中には、3社を掛け持つ人もいるなど、「シェアード社員」にとって、フレキシブルに自身の勤務時間を決める働き方ができるのも魅力のようです。また多くの企業と関わることで、自身のスキルアップにもつながっています。

山崎さん:「自分の成長にもつながっていると思うし、やりがいを持って続けられているのがありがたい」

それでは、シェアード社員を利用する会社側にとっては…

峯さん:「適時に必要なだけサービスを提供いただけるというのは、結構リーズナブルなサービスだなって思いますし、通常社員じゃないと無理な要求のレベルというものをやっていただけるので、まるで本当に採用したかのような働きぶりに感銘を受けている」

この会社ではシェアード社員の提案によって、それまで手入力に頼っていた企業の財産管理をIT化し、同時に社員の勤怠管理もできるシステムを構築するなど、今では会社の成長に不可欠な存在になっているそうです。

管理本部長:「最近のトレンドだとか、法改正もそうですけど、そういったものはどうですと聞けるのはありがたくて、通常は交流会などの集まりにいかないとキャッチアップできないので」

シェアード社員のサービスを立ち上げた須田社長は、IT人材に対する日本企業の意識の低さがIT業界の人材不足の要因だと分析します。

須田社長:「日本の場合、システム化しなくてもそれぞれの現場の人が創意工夫してなんとかしちゃうっていうのが、日本のカルチャーで強みだと思うんですよね。それなのでITがなくてもなんとかする能力が高い組織が多いと思うので、その結果IT化は遅れている」

今後も一層、デジタル化が進む中で、優秀な人材を社内業務のIT分野に配置できなければ、国際的な競争の中で残っていけないと指摘します。

須田社長:「これから大変人気な、輝ける職業になると思いますので、ぜひご注目いただきたいと思います」

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