旧沢内村テーマの動画、途上国の教材に 「生命尊重行政」を発信

生命尊重行政の歩みを振り返る深沢久子さん(左)と北島幸恵さん。現代社会に通じるメッセージとして浸透を願う=西和賀町沢内太田

 国際協力機構(JICA)は開発途上国の母子保健に役立ててもらうため、1962(昭和37)年に全国初の乳児死亡率ゼロを達成した旧沢内村(現西和賀町)をテーマにした動画を制作した。新型コロナウイルス禍で途上国の保健システムの脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなった中、当事者の証言を丹念に集め「誰も取り残さない」改革を実践した村民の主体性と共生の風土は、現代の保健衛生の目標を先取りしていたと示した。各国の行政官や医療従事者らの教材として「生命尊重行政」を発信する。

 「アンテナを張って地域の情報を共有する。医師も保健師も住民のために仕事をしている意識があったの」。同町沢内太田の旧国保沢内病院。動画に登場する元保健師の深沢久子さん(84)が、現役保健師の北島幸恵さん(49)に語りかけた。

 豪雪、貧困、多病多死にあった旧沢内村の改革は、57年に就任した故深沢晟雄(まさお)村長が推し進めた。「人命の格差は絶対に許せない」と除雪を含むインフラ整備や医療費無料化、病気の予防啓発や健診事業など先進的な地域包括医療を実現した。

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