処理水放出 工事大詰め 福島第1原発 6月完了へ公開

東京電力福島第1原発の立て坑近くに設置された海洋放出前の処理水と海水の配管の合流部=福島県双葉町(代表撮影)

東京電力は16日、福島第1原発で、処理水の海洋放出設備を報道陣に公開した。沖合の放出口と結ぶ海底トンネルは4月下旬に掘削作業が終了。放出に絡む全工事は6月末までに完了する予定だ。政府は放出時期を「春から夏ごろ」と計画しており、整備は大詰めを迎える。一方、風評被害を懸念する漁業関係者らは一貫して放出に反対している。

公開した設備は、海洋放出するための立て坑や、処理水を薄める海水の取水ポンプなど。二つの水槽で構成される立て坑のうち、放出前に処理水を最大2千トンためる上流水槽は今月上旬に完成した。

隣の下流水槽から掘った海洋トンネルは全長約1030メートル。大型掘削機で約9カ月かけて掘り進めた。今後、トンネル内壁に止水措置を施し、海水を引き込む作業を行う。

放射性物質トリチウムを含む処理水は、濃度が国の基準の40分の1未満となるよう海水で薄める。立て坑の脇には、処理水と海水の配管の合流部を設置。現場では海洋放出に関連する配管整備が進められ、これらの作業を終えれば「設備としては、ほぼ放出できる状態」(東電)という。

保管される処理水は16日現在で約133万トンで、容量の97%に達した。東電は満杯となる時期を来年2~6月と試算を見直す一方、廃炉作業を進めるには原子炉内から除いた核燃料(デブリ)や廃棄物の保管場所が必要だとして、タンクの増設は難しいとの姿勢を崩していない。

政府は1月の関係閣僚会議で放出時期を「今年春から夏ごろ」と確認したが、東電は具体的な時期を示していない。地元の理解を放出の前提としており、漁業者らに説明するとともに、風評被害防止へ処理水の安全性をアピールする。

この日は、汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)や浄化した処理水を保管するタンク、処理水を使った海産物の飼育施設も公開。ヒラメやアワビの飼育担当者は「処理水に含まれるトリチウムが体内で濃縮しないことや、海水に戻すと濃度が低くなることを確認した」と説明した。

一方、茨城沿海地区漁業協同組合連合会など漁業関係者は「風評被害は避けて通れない」と放出反対を貫く。本社加盟の日本世論調査会が3月に発表した全国世論調査では、海洋放出の賛成は26%、反対は21%。賛否が「分からない」が53%を占め、理解が進んでいない状況を示した。

東電担当者は「地元の理解はまだまだ足りない。地道な説明や(海産物の)販売促進などで、消費者に理解してもらえるよう活動する」と話した。

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