自公がLGBT法案を提出 「学校の設置者の努力」削除 当事者ら反発「教育を軽視」

多様な性を祝福する「東京レインボープライド2023」のパレードで笑顔を見せる参加者ら=4月23日、東京都渋谷区

 自民、公明両党は18日、LGBTQなど性的少数者への理解増進法案の与党案を衆院に提出した。だがその内容は、自民党保守派に配慮した結果、超党派議員連盟を中心にまとめた法案(議連案)から大きく後退。議連案で独立項目だった「学校の設置者の努力」は削除され、事業主の項目と一体化された。当事者らは「学校を安全な場にするためにも、子どもたちにこそ性の多様性を教える必要がある」と反発する。

 与党案には、学校が環境整備を通じて理解増進に努めるとの条文は残った。削除は「子どもに教えると混乱する」などの意見を踏まえたとみられる。

 「法案の格を下げた」と受け止めるのは、当事者支援団体「fair」代表理事の松岡宗嗣さん。「学校での理解増進を妨げようとするのは本末転倒。教育を軽んじる自民党の姿勢が透けて見える」と批判する。

 性的少数者やそうかもしれない若者を対象にした交流の場「にじーず」を主宰する遠藤まめたさん(36)=横浜市=もその必要性を説く。「性的少数者の子どもが初めてカミングアウトする相手は同級生の場合が多い。言いふらされるなど深く傷つけられる事態を防ぐためにも、LGBTQに関する正しい知識を学校で教えることが重要」

 実際、当事者の子どもたちは既に傷ついている。「性的指向や性自認に基づく差別やいじめから誰も救ってくれなかった」「小学校の教室内で、ホモやオカマという言葉が日常的に笑いの対象になっている」-。「LGBT法連合会」(本部・東京都)が公表する、当事者が直面した「困難リスト」には悲痛な訴えが並ぶ。松岡さんは「本当に必要なのは理解増進ではなく差別禁止だ」と強調する。

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