人間国宝・大倉源次郎さんらが能楽奉納 京都の棚田、五穀豊穣祈る

五穀豊穣を祈願して能楽の曲目を演奏する大倉さん(左)と林さん=福知山市大江町毛原

 京都府福知山市大江町の元伊勢内宮皇大神社の神事「御田植祭」がこのほど、同町毛原の棚田で営まれた。能楽小鼓方で人間国宝の大倉源次郎さん(65)らが能楽を奉納し、集まった地元住民ら約30人と五穀豊穣(ほうじょう)を祈った。

 大倉さんが発起人を務める「元伊勢能実行委員会」が、農業と芸能が密接だった古式の形を残そうと、地元自治会と協力して初めて実施した。

 棚田の中腹に野菜や酒を供えた祭壇が設けられ、シテ方の林宗一郎さん(43)と2人で「淡路」「猩々(しょうじょう)」の2曲を披露。大倉さんのかけ声と鼓の音に合わせ、林さんの歌声が集落に響き渡った。

 演奏後、大倉さんは芸能と農業は古来、非常に密接なものだったと説明。「歴史あるこの地から発信し続けたい」と話し、今後も能楽の奉納を続ける意向を示した。林さんは「風や鳥のさえずりが歌に反応してくれていたようだった。気持ちが届いたのかなと感じた」と笑顔だった。

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