不安広がる今こそ「自己肯定力」磨いて グリーフケアの第一人者が神戸に研究所「気づきの場に」

全人力を磨く研究所の理事長を務める高木慶子さん=神戸市灘区

 グリーフ(悲嘆)ケアや終末期ケアの第一人者で、上智大グリーフケア研究所名誉所長の高木慶子さん(86)=神戸市灘区=が理事長を務める一般社団法人「全人力を磨く研究所」が今春、設立された。新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻で世界情勢が不安定になる中、「一人一人が持っている力を発揮し、未来に希望をもてるように」と高木さん。講演会やワークショップを企画し、参加を呼びかけていく。(中島摩子)

 高木さんは阪神・淡路大震災(1995年)や尼崎JR脱線事故(2005年)、東日本大震災(11年)の遺族らに長く寄り添い、15年からは国土交通省公共交通事故被害者支援室のアドバイザーも務めている。

 約36年にわたり「ケア者」として生きてきた高木さんが「私の最後の仕事」という覚悟で立ち上げたのが同研究所(事務所・神戸市須磨区)だ。

 コロナ禍などで世の中が混沌とし、不安が広がる今こそ、一人一人がもっと自己肯定感を持って生きていけるようにしたい-と考えた。

 「全人力」とは、高木さんの造語で「自分が持っている全ての力」を意味する。その力を磨き、発揮できるようにすることで、自分自身の生きがいや他の人の幸せにつなげていくことを目指すという。

 そのためにはまず、「気づき」が大切として、開所記念の特別対談会(全5回)を、6月20日までオンラインで実施している。

 4月18日の初回は3人による鼎談で、医師で作家の鎌田実さん、「夜回り先生」として知られる水谷修さん、高木さんが意見を交わし、視聴を申し込んだ受講生らが耳を傾けた。

 「変化の時代に求められる心のあり方」などをテーマに、鎌田さんは「大事なのは、自分の人生をちゃんと生きているか、ということ。一生懸命生きてきて、つらいことも、失敗も、恥ずかしいこともしてきたけれど、これでいいんだという自己肯定力が大事。そして、自己決定していく訓練も大事だ」。

 一方の水谷さんは、自身のこれまでの人生を振り返り、「目の前で求めている人に、できることで答えてきた」と説明。「子どもたちに対し、一番多く使った言葉は『いいんだよ』。受け入れるところからしか始まらない」などと話した。

 高木さんとの対談会はすでに2回分が終了したが、5月23日は歌手坂本九さんの長女でシンガー・ソングライターの大島花子さん、6月6日は将棋の加藤一二三さん、同20日はノンフィクション作家の柳田邦男さんが登場予定。いずれも午後6時半から90分間で、受講料は5回通しで1万円。終了分は録画視聴ができる。

 研究所では今後、受講生によるグループワークなども計画しており、高木さんは「一人一人がすごい宝を持っている。死ぬ時まで、自分の力を磨いていくことが大事」と話している。

 対談会など詳しくは同研究所TEL078.855.8666。メール(info@zenjinryoku.com)でも受け付けており、名前と連絡先を記入して申し込む。

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