ホタル

 ホタルの乱舞が各地でピークを迎えている。今年はコロナ禍の窮屈な生活から解放され、夕闇の清流に癒やしを求める人も多いのではないか。久方ぶりのホタルまつりの開催に張り切る自治会もある▲長崎市と市民団体「ながさきホタルの会」は共同で長年、市内約80カ所で生息状況などを調査し、このうち足を運びやすい16カ所を市のホームページで公開している▲ゲンジボタルが中心だが、同会の小川保徳会長(66)によると、陸生のヒメボタルも一緒に楽しめる全国的に珍しいスポットも。近年は市街地でもホタルを見ることができるそうだ▲長崎市のホタルはかつて、他に例を見ないような壊滅の危機に瀕(ひん)したことがある。1982年の長崎大水害。集中豪雨による激流が多くの生息地をのみ込んだのだ▲犠牲者の慰霊も込めたホタルの里復活への取り組みが翌年、伊良林小校区で始まり、数年後に市の飼育・放流事業などもスタート。今では生き物たちに配慮した河川整備も各地で進んでいる▲小川会長は「下水道も普及し、大なり小なり定着してきた」と振り返る一方、最近はホタルの生息地をイノシシが荒らし回るなど新たな被害も確認されているという。自然環境の保全は一筋縄ではいかない。鑑賞の際はくれぐれもマナーを守り、はかない光を慈しみたい。(真)

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