〈高校相撲金沢大会〉被災地にエールの白星 飯田の4人奮闘

珠洲に届ける団体戦勝利を挙げた飯田の選手を校歌で祝福する応援団=金沢市の石川県卯辰山相撲場

  ●選手家族「じんときた」

 被災地にこれ以上ないエールを届けた。21日開催された北國新聞創刊130年記念・第107回高校相撲金沢大会(北國新聞社主催)。震度6強の地震で被害があった珠洲から4人で出場した飯田が明野(三重)から2-1で白星を挙げ、卯辰の土俵を沸かせた。足を運んだ家族も「ひととき地震を忘れられた。頑張りにじんときた」と目を潤ませ、選手の奮闘に負けず、復興を誓った。

 飯田の見せ場は明野との予選3回戦だった。1回戦で大曲農(秋田)に1―2、2回戦では木曽青峰(長野)に0―3で敗れ、決勝トーナメント進出に後がなくなったところから意地を見せた。

 1年の波佐谷兼諒選手に代わり急遽(きゅうきょ)、先鋒となった2年の船橋竜之祐選手が「勝つしかない」と相手に食らい付き、寄り切りでまず1勝。唯一の3年で中堅の梅木綾佑選手が「絶対取る」と鋭く前に出て、寄り切りで2勝目をつかんだ。大将で2年の高木幹太選手は敗れたものの、今大会の団体初勝利をつかんだ。

 5日の地震で練習場所である珠洲市緑丘中の屋内土俵は亀裂が入り、使用不能になった。それでも「白星で地元を元気に」を合言葉に屋外の土俵を手入れして稽古を続けてきた4人。目標の団体決勝トーナメント進出は果たせなかったが、チームを引っ張ってきた梅木選手は「悔しさもあるが、最後に力を出せた。故郷を励ますことができたならうれしい」と笑顔を見せた。

 船橋選手は「運が良かっただけ」と謙遜しながらも、少しほっとした表情。今大会で勝ち星を挙げられなかった波佐谷、高木両選手は「仲間だけでなく、他校の応援も力になった。悔しさを来年にぶつける」と決意を新たにした。

 地震で選手たちの自宅も壁に亀裂が入るなどの被害が出た。船橋選手の家は屋根にブルーシートを掛けたままの状態が続いている。祖母の船橋まき子さん(72)は「チーム一丸で闘う姿に涙が出た。大変だけど何とか頑張りたい」と一緒に暮らす孫の健闘をたたえた。

 懸命な取組を見せる4人に、生徒や保護者ら約70人がスタンドから後押しした。野球部主将の森田純矢さんは「相撲部の熱い思いが伝わってきて、こっちも熱くなった。次は自分たちが大会で勝利して珠洲を勇気づけたい」と力を込めた。

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