石木ダム収用地で工事 反対住民「手続き必要」 長崎県庁訪れ2度目の抗議

用水路の写真を掲げ県に抗議する反対住民ら=県庁

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対住民3人と支援者の計約20人が23日、強制収用した耕作地で工事を進めているとして、県庁に出向き「代執行の手続きが必要。無断で工事はできない」と抗議した。県側は「(建物などがない)さら地のため工事を進めることができる」と反論した。
 抗議は4月に続き2回目。県は土木部幹部が対応した。住民によると、県側は5月の連休明け、耕作地の隅にあった樹木を、土地を収用された住民への予告なく伐採。住民側は収用地であっても土地の占有者がおり、工事を進めるには手続きが必要と訴えたが、県側は「耕作だけで(土地を)占有しているとは判断していない」と主張した。
 また、耕作地に設置しているイノシシよけフェンスについて、住民側は土地と分離した動産であるとして「県は撤去できない」と指摘したが、県は「コンクリートで土地に固定されている」として、撤去できるとの解釈を示した。
 県は今後の話し合いについて「どのような形でできるか調整して、理解を求めていきたい」としている。
 抗議に先立ち、同日午後、石木ダム建設に反対する川棚町民の会(炭谷猛代表)は、反対13世帯が暮らす川原地区の現状を伝えるオンライン報告会を開いた。約30人が参加。田んぼに通じる用水路が壊され、耕作不能になった住民の川原房江さん(82)は「腕がもぎとられたような思いで、ご先祖に申し訳ない」と涙を浮かべた。「公共事業は一度計画したら見直さない」と訴え、抗議活動への賛同と世論の喚起を呼びかけた。

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