【中国】ナトリウム電池、車メーカーの採用意欲低く[車両]

中国自動車業界団体の全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)はこのほど、次世代車載電池として注目されるナトリウムイオン電池に関して、自動車メーカーの採用意欲が高まっていないとするリポートを発表した。価格がまだ十分に下がっていないことが要因。コストは現在の主流のリチウムイオン電池とほぼ同程度で、自動車メーカーにとって搭載電池を換えるメリットは小さい。

CPCAは、自動車業界の調査会社である科瑞咨詢とともにナトリウムイオン電池に関する業界の動向を調査。電池業界はナトリウムイオン電池の開発や量産化に積極的に投資を行っているものの、自動車業界は採用に消極的だとの見方を示した。

今春の上海モーターショーでは、こうした電池業界と自動車業界の温度差が顕在化したと指摘。車載電池の世界最大手である寧徳時代新能源科技(CATL)は自社のナトリウムイオン電池のアピールに注力したが、同電池の採用に動いた自動車メーカーは多くなかったと説明した。

背景にあるのは、コスト面の魅力の低さ。リポートによると、ナトリウムイオン電池の材料コストは現時点で1ワット時当たり0.49元(約9.6円)で、リチウムイオン電池の0.51元をわずかに下回るのみだ。

ナトリウムイオン電池の大きな強みは、主材料のナトリウムが世界中に遍在していることを背景とするコストの低さとされてきた。ただ、材料の生産量が十分に拡大しておらず、コスト面の優位性はまだ際立っていない。

リチウムイオン電池の主材料となる炭酸リチウムの価格が昨年秋のピーク時に比べ大きく下がっていることも、ナトリウムイオン電池の魅力を相対的に下げている。

■供給網整備後はコスト3割安

ただ、ナトリウムイオン電池のコストは将来的に大きく下がる可能性を秘めている。リポートによると、サプライチェーン(供給網)の整備後は材料コストが0.29元となる見通し。リチウムイオン電池は今後さらにサプライチェーンが整備されても0.4元までしか下がらず、ナトリウムイオン電池の方が約3割低くなる。

ナトリウムイオン電池はコスト以外に、低温時の性能の高さ、発火の危険性の低さといったリチウムイオン電池にない魅力も兼ね備えている。

CPCAと科瑞咨詢はこうしたナトリウムイオン電池の魅力を踏まえ、電池業界はまずナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池を内包するハイブリッド電池の販売に力を入れるべきだと提言した。ハイブリッド電池は2つの電池が互いの弱点を補完しているため性能が高く、自動車メーカーの採用が拡大しやすいとみている。

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