飼い主のマナー問題は万国共通、ペットを守るためにも必要なマインド 福井では爆竹投げられたとの情報も【杉本彩のEva通信】

散歩中の犬

飼い主と共に、犬も社会の一員としてレストランやホテル、公共交通機関などの利用に寛容なヨーロッパ。それ故に飼い主のマナーが向上したのか、それともマナーが良いからそうなのか、その辺の事情はわからないが、飼い主のマナーについては成熟している点が多いのかもしれない。

そんなヨーロッパでも、よく聞くのは犬の糞が放置されている問題だ。犬の糞問題は世界共通のようだ。有名な話しでは、フランスのパリには犬の糞がたくさん落ちているという。私が最後にパリに行ったのは19年程前になるが、現地で暮らすコーディネーターから、犬の糞を踏まないように気をつけてとの注意があった。確かに当時、道路上の糞をよく見かけた記憶がある。以前は日本人のように袋を持参して糞を持ち帰るという習慣はなかったようだが、数年前に糞を放置したら罰金が課されるようになり、拾うのがマナーになりつつあるという記事を読んだことがある。犬の糞問題が解決したのか気になるところだ。

たとえばドイツのベルリンでも糞問題はあったようで、清掃に当たるベルリン市清掃局によると、その量は1日で55トンにも達していたという。ドイツの中でもベルリンは特に犬に寛容な街として知られているが、そんな市民もさすがに犬の糞問題には不快感を持っていたようだ。それを受けて、15年程前からドイツの街には糞の処理袋とゴミ箱がセットで設置されるようになり、その効果で以前より街がきれいになったという記事を目にしたことがある。また、ベルリンで暮らす知人からも、このゴミ箱は画期的だと聞いていた。 このような話しを聞くと、衛生面について意識の高い日本は、糞の処理袋やおしっこを洗い流す水を持参したり、そのマナーは優れているように思う。しかし、マナーの悪い人がいることも事実だ。

4月には、福井県総合グリーンセンターで、飼い主と散歩中の犬に向けて爆竹が投げられたという情報が福井新聞に寄せられた。同センターは、この危険な行為に厳正に対処していくとしている。だが、断続的に散歩のマナー違反に対する苦情も寄せられていることから、マナーを守るよう看板を設置して呼びかけているという。マナー違反に対する怒りの矛先が犬に向いたという可能性が高いと考えられるようだが、どういう理由でこのような危険行為に及んだのか定かではない。傷害罪や動物愛護法違反に問われかねない許し難い行為である。このようなことが起こると、マナーを守って散歩している人にとっては本当に迷惑だ。犬同伴に対するネガティブな印象を与えるし、ますます犬と散歩できる公園が減ってしまいそうだ。公園や海岸をはじめ、犬と一緒に利用できる施設もまだまだ少ないのが現状。散歩を必要とする犬との暮らしに不自由さを感じることも多いはず。ペット大国と言われる日本において、こういうアンバランスさにはやはり違和感しかない。

ペット大国と言われるようになったゆえんは、ペットとの暮らしを促す広告やテレビ番組などが溢れ、ペットビジネスが盛んなだけで、決してペットと暮らしやすい社会だからではない。ペットと暮らす人が増えることに伴い、さまざまな問題が増えることも懸念される。

たとえばマナー違反の問題だけでなく、スーパーやコンビニ、銀行などに行くとき、ほんの少しの間、愛犬を店の前に繋ぎ用事を済ませようとすることがあるかもしれない。炎天下で長時間待たせるなんて言語道断だが、たとえほんのわずかな時間でも、愛犬が危険な目に遭う可能性がある。以前、こんな話しを聞いた。

ほんの一瞬コンビニに寄ってお店を出た時、愛犬が通りすがりの男に蹴られるのを目撃したという。愛犬は無事だったようだが、最悪の場合、命に関わる事態になることもある。目撃した飼い主さんは、自分の身の安全もかえりみず、女性ながら男に反撃した。すごいファイターだが、やはり最大限の注意を払いリスクは避けたほうがよい。残念だが、ますます世知辛い世の中になり寛容さを失った今、そのストレスの矛先は、動物、子ども、高齢者へと必ず弱い立場のものに向かう。だからこそ、動物たちを守るためにも、飼い主はきちんとマナーを守り、最大限の注意を払いたい。犬の飼い主も納税者なのだから、誰もが公平にその生活スタイルに合わせ公園を利用できるのが望ましい。そのためには、互いの立場を理解し合い、思いやる努力に尽きるのだ。(Eva代表理事 杉本彩)

⇒「杉本彩のEva通信」をもっと読む

※Eva公式ホームページやYoutubeのEvaチャンネルでも、さまざまな動物の話題を紹介しています。

  × × ×

 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。

© 株式会社福井新聞社