雀卓カバーで起死回生! アパレル会社「ニル」 原田社長、次局見据える

麻雀卓にケースカバーをかぶせれば、机として使える=長崎市、ニル

 新型コロナウイルス禍で不振にあえぐアパレル会社が意外な商品を売り出し、業績をV字回復させた。長崎市内でレディースファッション店を展開する「ニル」の窮地を救ったのは、全自動麻雀(マージャン)卓ケースカバー。注文から2カ月待ちのヒット商品になっている。
 ニルは、インテリア雑貨も扱う「エルパナリ アンデプリュス」(同市浜町)と「ニルスタイルカフェ」(同市茂里町)の2店舗を運営している。
 「アパレルだけじゃ食っていけない。生き残るにはどうすればいいか」。2020年夏、感染症対策の外出自粛要請などで服飾需要が細る中、原田健一郎社長(62)は起死回生の一手を考えていた。同市住吉町の事務所に趣味の麻雀卓を置いていると、妻から「職場で見えるのはよろしくない」と諭され、ひらめいた。「使わないときはカバーで隠し、テーブルとして普段使いできればいい」
 普段アクセサリーの展示棚を作る家具職人で従業員の和田隆信さん(59)が、雀卓に覆いかぶせる形で木材を組み立て塗装。程よい光沢感を出し、滑らかな手触りに仕上げた。原田社長は「使ってみると案外良かった」ことから商品化に踏み切った。
 これが当たった。麻雀の国内最高峰「Mリーグ」で活躍する日向(ひなた)藍子プロが、紹介する動画を配信したおかげで、全国の愛好家に口コミで広まった。昨年12月に大手メーカーが全自動雀卓の新製品を発売すると、ニルのカバー受注も倍増。これまでに200台を納入した。価格は雀卓のサイズに合わせて2万9千円から特注の3万8千円まである。
 今月から同メーカーの代理店となり、事務所にショールームを開いた(見学は要予約)。雀卓とのセット販売も始め、「これから稼ぎ頭になっていきそう」(原田社長)。3期連続赤字だったのが今期は黒字転換を見込む。
 「こんな身近に(新商品の)ヒントがあるなんて思ってもみなかった。(中小企業は)いろんな事をしないと生き残れない。これからも新たな一手を考えていきたい」と原田社長。役満で上がった勝負師のように次局を見据えた。


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