露の「文化的虐殺」に危機感 元在ウクライナ日本大使館職員・キーウ出身のシュータさん 長崎大で講義

ロシアのウクライナ侵攻に至った歴史的な背景を説明するシュータさん=長崎市片淵4丁目、長崎大経済学部

 元在ウクライナ日本大使館職員のシュータ・ロリナさん(29)が26日、長崎市の長崎大経済学部で講義。ロシアによる軍事侵攻の歴史的な背景を説明し「ロシアは子どもを連れ去り、占領した地域でロシア語での教育やロシア側の歴史を強制している。ただちに止めないと取り返しのつかないことになる」と述べ、「文化的虐殺」への強い危機感を示した。
 シュータさんは首都キーウ(キエフ)出身。大使館職員だった昨年2月にロシアがウクライナに侵攻し、同4月に来日。同6月から双日総合研究所(東京)研究員としてウクライナに関する調査に携わっている。
 シュータさんは、ウクライナの起源である9世紀のキエフ・ルーシ(キエフ公国)成立を巡り、ロシアのプーチン大統領が「ルーシの伝統を継いだのは自分たちだ」と主張していると説明。ポーランドやロシア帝国による支配、オーストリアの影響下にあった西部地域など母国の複雑な歴史を振り返った。
 宗教やイデオロギーの問題も絡み「歴史的な発展は文化の多様性と政治的な分断を引き起こした」と指摘。「自国の文化の発展のため多様性が重要だ」とした上で、プーチン氏がウクライナという国家や民族を一方的に否定し「特にナショナリズムを象徴するものを見つければ、すぐに破壊している」と非難した。
 講義は国際関係概論で、同研究所相談役で同学部客員教授の多田幸雄さん(70)らも登壇。1年生約300人が聴講した。

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