長崎くんちを似顔絵で盛り上げ 県警鑑識課・松尾さんが長崎市内で作品展 歴代出演者を表情豊かに 30日まで

上級似顔絵捜査官の松尾さん=県警本部

 似顔絵で盛り上げたい-。長崎くんちの小屋入りがあった1日、県警鑑識課の上級似顔絵捜査官、松尾崇志さん(51)による「長崎くんち似顔絵展」が県警本部や県庁、長崎市役所の各食堂で始まった。16年前から書き続けてきた約50枚を披露。「出演者の生きざまや思いが表れた気迫ある表情、幸せそうな笑顔を切り取った似顔絵を見て、楽しんでほしい」。30日まで。
 似顔絵捜査官は、被害者らの証言から容疑者の特徴を描き、事件解決につなげる。防犯カメラなど科学技術が進化した今も捜査の大きな武器。県警では現在、優れた技能などがある人を指定する上級似顔絵捜査官2人、似顔絵捜査官13人が活躍している。昨年は似顔絵計91件を作成し、5件が摘発に結び付いた。
 同市深堀町出身。高校卒業後の1990年、樺島町の太鼓山(コッコデショ)の庭先回りを見て以来、くんちのとりこに。「何としても出たい」。職場が踊町ならチャンスがあると思い、当時、本部が万才町だった県警の採用試験を受け、91年に拝命した。
 念願のコッコデショの担ぎ手になったのは97年。その後、踊町の麹屋町に転居し、2007年と14年、川船の根曳(ねびき)を務めた。「くんちで感じる地元愛に憧れる。豪華絢爛(けんらん)な山車や衣装、豪快な船回し。魅力は語り尽くせない」
 似顔絵展は、4年ぶりのくんちを盛り上げようと企画。3会場には、過去の長崎くんちで御花(祝儀)として描き続けてきた出演者らの似顔絵が並び、「これまで出会った人たちへの恩返し」と語る。

夫の似顔絵(右)を見詰める安達さん=長崎市役所

 くんちの“名物”だった人も登場。17年に閉店した東古川町のレストラン「きっちんせいじ」の店主で、20年2月に亡くなった安達征治さんだ。同町の川船で長采(ながざい)を2度務めたほか、長崎伝習所「長崎くんち塾」を率い、踊町の横のつながりの礎を作った。
 1日、安達さんの妻、妙子さん(75)=東京都=は小屋入りを見た後、似顔絵が飾られている市役所へ足を運んだ。「(夫の)口の特徴を捉えていて、穏やかな雰囲気も描かれている。松尾さんから完成した似顔絵を見せてもらった時、涙が出た」。生前、くんちに情熱を注いでいた夫を思い出し、目を細めた。

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