人は気長になったか

 私事で恐縮だが、昼食時、ある食事の店で一品を注文した。20分以上たっても何も出てこない。「あの…まだですか」「あれ? 注文しましたか?」。話がかみ合わず「もういいです」と店を出た経験がある▲注文したのを忘れ去られ、つい席を立った次第だが、もし「今すぐ作りますから」と呼び止められたら待ったかどうか。いや、もう限度だったかな…。思い出すたび、少し大人げない自問自答が始まる▲シチズン時計(東京)が10日の「時の記念日」を前に、働く400人に「待ち時間」にまつわる意識調査をした。5年前の同じ調査と比べ、人は「気長」になったという▲ランチの料理が出てくるまで、イライラせずに待てる限度は、5年前なら「10分」が多数派で、今年は「15分」が最も多い。筆者は人並みだろうか▲役所の窓口、スーパーのレジでも「待ってもいい時間」が5年前より延びた。コロナ禍の“巣ごもり”で時間の感覚が変わり、待ち時間もスマートフォンを触っていればやり過ごせることなどが理由に挙げられるという▲人それぞれ、待ち時間の使い方が分かってきて「効率重視派」が増えたのだろうか。録画や配信の映画を早送りで見る人が少なくない時代でもある。コロナ後は“のんびり派”が占める社会に-とは、なかなか言い難い。(徹)

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