きょう第1局

 藤井、藤井、フジイの大合唱である。この盛り上がりが海外まで波及していないか、と最後はカタカナにしてみた。史上最年少、20歳10カ月での名人位獲得と、羽生善治さん以来の「七冠」への賛辞がやまない将棋の藤井聡太新名人▲休む間もなく、きょうから棋聖位の防衛を懸けた5番勝負に臨む。挑戦者は、もう何回もこの欄で書いた対馬市出身の佐々木大地七段。2人の棋士番号は隣り合わせで、プロ入りは佐々木さんが半年早い▲「早ければ年内にも」と“夢の全8冠制覇”への期待が語られ始めている。しかし、長崎の将棋ファンとしては大きめの釘を刺しておきたい。全冠制覇の前提となる棋聖と王位の防衛はまだこれからだ▲とはいえ、今後しばらくは“藤井の快挙”を望む世論と「完全アウェー」の空気が対局場を覆うだろう。挑戦者の手は思うように伸びるだろうか、と少し心配していたら▲とても心強い反論をベテラン棋士のエッセー集で見つけた。いわく〈勝てば天国、負ければ地獄の単純な論理のもとに生きている〉のが棋士だ。だから〈おしなべて闘争本能が強い。小学校低学年から他に何もやっていない者が闘争心が弱いわけがない〉-なるほど▲注目度抜群の舞台にふさわしい熱戦が展開されるはずだ。こちらも熱く熱く見守りたい。(智)

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