「死にたい…」白昼の陸橋、飛び降り寸前の女性が目の前に 60代塾講師が果たした、いつかの善行の恩返し

のじぎく賞の伝達を受けた久米智子さん=須磨署

 橋から飛び降りようとした60代女性を助けたとして、兵庫県警須磨署は、塾講師の久米智子さん(65)=神戸市須磨区=に県の善行賞「のじぎく賞」を伝達した。死をほのめかす女性を励まし、思いとどまらせたという。

 同署や久米さんによると3月上旬の15時ごろ、勤務先の塾に徒歩で向かう途中、陸橋の欄干から上半身を乗り出す女性を見つけた。下には片側2車線の市道が延びており、車の往来も多かったという。

 久米さんが「どうしましたか」と話しかけると、女性は「死にたい」とつぶやいていた。とっさに両手で肩をつかむと、女性は無表情で歩道に降りたという。近くの通行人男性2人にも協力を求め、久米さんは「1人で抱え込まなくても大丈夫ですよ」などと女性を励ました。

 5月15日には同署で藤猪史郎署長がのじぎく賞を伝達。久米さんは「橋の下は交通量が多く、一歩間違えれば亡くなっていたかもしれない。引き留められて安心した」と胸をなで下ろした。

 今年2月にJR三ノ宮駅で原因不明の腹痛により倒れ、周囲の人に助けられたという久米さん。受賞に対して「あの時は大勢に助けられた。自分も誰かを支える側になりたいと思っていた」と話した。(小野坂海斗)

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