イニエスタは「神戸に必要」「まだいてほしい」 バルサ戦で81分間躍動、SNSで惜しむ声相次ぐ

神戸-バルセロナ 後半、ベンチへ下がる神戸のイニエスタ(右)をたたえるバルセロナのシャビ監督(撮影・棚橋慶太)

 サッカーJリーグ1部(J1)の首位ヴィッセル神戸と、スペイン1部リーグ王者バルセロナとの親善試合が6日、東京・国立競技場で行われた。神戸の主将で今夏の退団を表明しているイニエスタが古巣相手に衰えぬ技を披露。交流サイト(SNS)では「神戸に必要な選手」「まだ神戸にいてほしい」と惜しむ声が相次いだ。

 かつての神戸は、バルセロナのようなポゼッションサッカーを志向したが、現在は一転、豊富な運動量と強度の高いプレーで2月からJ1の首位を走っている。

 イニエスタはけがからの復帰後も、リーグ戦出場は3試合の途中出場のみ。当初は神戸での引退を望んでいた本人も「監督の優先順位が違うところにあると感じた」と移籍を模索するようになった。

 この日のバルセロナ戦は、7月1日のJ1札幌戦限りで退団することになった世界的名手のために用意された。神戸は0-2で敗れたものの、イニエスタは昨年8月のJ1セレッソ大阪戦以来の先発を担い、81分間躍動した。

 盟友であるバルセロナのシャビ監督が「ベテランだが、クオリティーには目を見張るものがある」とたたえた通り、39歳になっても判断能力や足元の技術は確かなものだった。

 開始早々、自陣左のタッチライン際。囲まれると、ボールを相手の頭越しに浮かせ、前を行く初瀬に届けた。前半7分にはサンペールから敵陣中央で受けたボールを、ワンタッチで右サイドへとスルーパス。高橋に惜しくもつながらず、会場のため息を誘った。

 自ら放ったシュートは前半の2本。31分、ペナルティーエリア手前左から右足を振り抜き、わずかにゴール左にそれる。前半終了間際、ペナルティーエリア内に飛び込み、斉藤とのワンツーからの決定機は惜しくもGKに阻まれた。

 再三見せ場をつくった背番号8に対し、途中出場した神戸の主力FW武藤は「ずばぬけている。すべてを成し遂げている選手と、日本の地でプレーできたのは本当に素晴らしい経験」と思いを込めた。

 試合後、イニエスタはピッチで涙を拭った。その胸の内を問われ、しみじみと語った。「ファンの皆さんからずっとリスペクトや、素晴らしい扱いを受けてきた。(神戸での)5年間の経験が人生の一部になっている。それを思い返すと特別な感情がこみ上げてきた」

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