人口4千人足らずの町、新幹線駅南口の道の駅が大人気 北海道木古内町、マイカー使う道民に照準

【グラフィックレコード】満足度NO.1道の駅
道の駅満足度ランキングで「みそぎの郷きこない」が1位となったことをPRする看板=5月18日、北海道木古内町

 本州と北海道を結ぶ青函トンネルを抜け、北海道新幹線(新青森―新函館北斗間)の道内最初の駅となる木古内駅(きこないえき)。人口4千人足らずの木古内町中心部に、駅舎と道の駅「みそぎの郷きこない」がある。5月中旬、同じ便で同駅に降りた乗客は数人ほどだったが、道の駅は、豊富な土産物を品定めしたり、フードメニューを堪能したりする多くの人でにぎわっていた。100を超える道内の道の駅の中で、満足度ランキング1位を獲得している“実力”がうかがえた。

 駅開業2カ月前の2016年1月にオープンした道の駅は当初、新幹線駅構内に売店がないことから、飲食物販などの機能を備えた「町観光交流センター」として計画が進んだ。一方、町関係者の間で「北海道は車社会。新幹線で来る観光客だけでなく、地元住民や道内の人たちにも利用してほしい」(田畑裕まちづくり未来課長)との思いが膨らみ、道の駅の登録を目指すことにした。

 木古内を含む道南西部9町や交通事業者などによる協議会が10年に発足し、エリア一体の地域活性化につなげようと道の駅の在り方を探った。今では9町の厳選した野菜や海産物、地酒など豊富な物販が評判を呼ぶようになった。毎年5月の大型連休には約400台分ある駐車場がいっぱいになるほどで、多くはマイカーの道内の住民や函館などからのバスツアー客という。

 新幹線開業前の木古内町の観光入り込み客数は年間約6万人程度で、開業した16年は約62万人と10倍に。うち8割は道内からだった。その後は減少傾向となり、新幹線利用者も増えていないというが、「新幹線学」を提唱する青森大学の櫛引素夫教授は「新幹線開業に合わせて道の駅ができ、道内の人たちが木古内周辺を訪れ、にぎわいが生まれた。この仕組みができたこと自体が新幹線効果だ」と話す。

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 「道の駅によって観光客に立ち寄ってもらえる土台はできた」と田畑課長。次の課題として「木古内を目的地にしてもらい、立ち寄り型から滞在型にシフトしていくための観光素材の磨き上げ」を挙げる。

 町は新幹線開業に合わせ、駅前から海岸までの約500メートルで観光客向けのまち歩きプログラムをつくった。海岸では毎年1月に伝統神事「寒中みそぎ」があり、雨具を着て冷水を浴びる神事の疑似体験も一定の人気を集めている。まち歩きガイドを務める町観光協会の藤谷晃章事務局長は「町には自慢できる自然や食、歴史がある。新幹線を契機に町の認知度は高まっており、ポテンシャルを生かした誘客に力を入れる」と意気込む。

 町は21年にアウトドア用品のモンベルと包括連携協定を結び、町内へキャンプ場などのアウトドア施設整備に向けた調査を実施した。豊かな自然を武器に誘客を図る構えだ。田畑課長は「新幹線が開業したことでハード面もソフト面も含め、まちのデザインが変わるきっかけになった。札幌や函館にはない魅力をどう発信していくか。まだまだやらなければならないことがいっぱいある」。

有名イタリアンシェフ監修のレストランも

 北海道木古内町の道の駅「みそぎの郷きこない」は北海道新幹線木古内駅南口にあり、鉄骨平屋建て延べ床面積約840平方メートル。木古内、知内、福島、松前、江差、上ノ国、厚沢部、乙部、奥尻の道南西部9町の魅力を発信し、ショッピング、グルメ、観光情報を提供。約千種類の土産品が並び、観光コンシェルジュが常駐している。

 利用者アンケートを基にした、旅行情報誌「じゃらん」の道内の道の駅満足度ランキングで、18~20年、22年と4回トップに輝いた。有名イタリアンシェフ奥田政行氏が監修したレストラン「どうなんde's」も人気を集める。

 来館者数は17年に累計100万人、22年3月に同300万人を突破した。高規格道路の木古内インターチェンジ開通が追い風となり、22年度は年間来館者数が初の60万人を超えた。木古内町の観光入り込み客数のうち8~9割が道の駅を訪れている。

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 2024年春の北陸新幹線県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」。第3章のテーマは「新幹線が来たまち」です。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

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