リジェ、ル・マンで水素エンジン開発車『JS2 RH2』を発表。ボッシュと共同で技術構築目指す

 6月8日、リジェ・オートモーティブとボッシュ・エンジニアリングは、2社が共同開発を行う水素技術実証車両の『リジェJS2 RH2』をフランス、ル・マンで世界初公開した。

 現在ル・マン24時間レースの“100周年記念大会”が行われ、2026年には水素技術を取り入れたカテゴリーの創設が予定されている同レースの会場であるサルト・サーキット(ル・マン24時間レース・サーキット)で初披露された車両は、既存のレーシングカー『リジェJS 2R』をベースにしているが、水素エンジンを搭載するためにいくつかの改良が施されている。

 リジェとボッシュは『RH2プロジェクト』を通じ、2026年のル・マン24時間で利用できる水素技術の開発・実証を目指している。この2シーターモデルは、現在のところ実戦への参加は想定されていないが、リジェ・オートモーティブのジャック・ニコレ社長は、「レースに参加できる状態」であることを示唆した。

 水素をシリンダー内に直接噴射する3.0リットルV6ツインターボ・エンジンを搭載し、最高出力420kW(571ps)を発揮するこのマシンについて、ニコレは「JS 2Rのボディワークとデザインはそのままに、中身はまったく新しいクルマになっている」とSportscar365に語った。

「JS 2Rはチューブラーシャシーだが、私たちは安全性とクルマの剛性を最大限に高めるために、水素タンクを完全に組み込んだフルカーボンモノコックを採用した」

「目標はこのクルマでレースに出る準備をすることだ。2週間前、我々はボッシュのテストコースでJS2 RH2を走らせた。そこではデバッグを行ったが、今週末以降はクルマの開発の(次の)フェーズを開始するだろう」

直噴水素エンジンを搭載する『リジェJS2 RH2』は、リジェ・オートモーティブとボッシュ・エンジニアリングによって共同開発されている。

 燃料となる水素は、ヘキサゴン・ピュラス社が供給する700気圧の車載タンク3基(総容量6.3kg)に貯蔵される。総重量が1450kgとなった開発車両には、リジェのLMP3カー『JS P320』からブレンボ製ブレーキ、ボッシュ製のABSと8速デュアルクラッチトランスミッションが移されている。

 リジェがJS2 RH2のモノコックを設計した一方、ボッシュ・エンジニアリングは車両のエンジン、タンク、セーフティシステムの開発を統括した。

 安全装置には、タンク、ガス制御コンポーネント、およびエンジンベイの分離に加えて、ガスが外気に到達してコクピットに入るのを防ぐパイプによる“パッシブ換気コンセプト”が含まれている。

 ボッシュ・エンジニアリングのモータースポーツ部門を統括するヨハネス-ヨルグ・ルーガー博士は、「このような新しい技術では、課題を克服する必要がある」と述べた。

「ひとつめは開発期間の短さだ。昨年11月にプロジェクトを開始し、6月にはすでにレーストラックを走っているクルマでここにいることは、チーム全体の素晴らしい成果だ」

「既存のV6エンジンを水素に対応させ、パッケージングをすべてリジェ側で行った。タンクコントロールはとくに重要な部分だった。安全にレースに出られる車両にするために、設計は白紙から行っている」

パワーユニットは水素を直接噴射する3.0リットルV6ツインターボエンジン。420kW(約571ps)の最高出力を生み出す。
ベース車両のリジェJS 2Rとは異なり、『JS2 H2R』ではカーボンモノコックが採用されている。

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