社説:選挙管理委員 京滋でも「議員枠」見直しを

 事件を契機に、公正な選挙運営を統括する「選挙管理委員」の在り方を、各自治体議会で議論してもらいたい。

 4月9日投開票の京都市議選を巡り、市の選挙管理委員でありながら、立候補を控えた長男の選挙活動を手伝ったとして、京都府警が公選法違反の疑いで井上与一郎元市議会議長を書類送検した。

 選管委員は選挙日程の決定や、実務を担う事務局の管理などを担う。地方自治法に基づき、首長から独立した合議制の執行機関として自治体ごとに置く。4人の委員は特定公務員の身分で、京都市選管なら月27万円の報酬が公金で賄われる。当然、選挙活動は禁じられている。

 容疑が事実なら、民主主義の基盤である選挙をゆがめる行為だ。そもそも疑いを招くような振る舞い自体、看過できない。

 与一郎元議長は右京区の自民党市議として2019年まで10期務め、議長を2度歴任している。19年選挙で長男の与裕氏が地盤を継いで当選。与一郎元議長は21年に選管委員に就いた。

 容疑に対し「公選法違反という認識はない」と否認しつつ、選挙中に長男の選挙事務所に出入りし、掃除など選挙運動以外の事務は手伝ったという。4月の市議選後、4年の任期の約半分を残して委員を辞めた。

 府警は長男の出陣式を案内するはがきを、複数の有権者に発送したとして摘発したようだ。捜査を尽くしてほしい。

 問題の根底には、多くの自治体で選管委員が引退した議員の「名誉職」「天下りポスト」のように扱われ、政党の持ち回りになっている実態がある。

 委員は自治法で「人格が高潔で、政治及び選挙に関し公正な識見を有するもの」とし、議会の選挙で決めると定める。

 京都府と京都市の両議会では、各会派が推薦した人を選ぶのが慣例という。05年以降、京都府が16人中15人、京都市が18人中9人が元議員だった。

 滋賀県選管では、委員長の元県議が自らの政治団体で、自民党県連の寄付を受けていたことが発覚し、問題になった。

 全国では広島県や北九州市のように弁護士らが就き、「政党色のある元議員は対象外」とする自治体は少なくない。現在、京都府は全員が元議員だが、都道府県でも希少例とみられる。

 4月の統一地方選では「開かれた議会」や「身を切る改革」などを掲げ、当選した議員が目立った。選管委員の元議員枠も、不透明な議員特権の一つではないか。各議会は有権者の目線に立って見直すべきだ。

 また、自治体の財務事務をチェックする「監査委員」には、現職議員枠がある。だが、議会本来の役割と重複するなどと批判され、17年の法改正で議員枠を廃止できるようになった。大阪府や大津市などは実施した。こちらも議論の対象にしたい。

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