宇都宮市11人で全国3位 重度障害者の就労支援利用、実施市町は広がらず

宇都宮市役所

 重い障害のある人の就労時に必要な介助費用を補助する国の「就労支援特別事業」で、今年1月1日時点の宇都宮市での利用者は11人となり、大阪市の29人、京都市の14人に次いで全国で3番目に多いことが12日までに、厚生労働省のまとめで分かった。全国的に自治体による実施が低迷し、56自治体が取り組む中、実際の利用は29自治体の108人にとどまっている。県内では宇都宮市のみで、実施市町は広がっていない。

 重い障害がある人は、重度訪問介護や同行援護など、公費による全国一律の障害福祉サービスではヘルパーによる介助を受ける。しかし、通勤や仕事は個人の経済活動と見なされサービスの対象外となるため、就労を諦めざるを得ない人もいた。

 そこで、重度障害者の就労を後押しするため、2020年10月に就労支援特別事業が始まった。国と市町村が連携して就労中の介助にかかる費用を補助する仕組みで、実施するかどうかは市町村が決める。

 宇都宮市は同年、福祉サービスの利用状況から、重度訪問介護と同行援護を利用している計30人が就労状態にあると見込み、実態の聞き取りなどを踏まえて21年8月に事業を始めた。当事者団体との意見交換などを通じて、23年度は肢体不自由の2人と視覚障害がある9人の計11人が制度を活用する。

 就業形態は被雇用者が2人で、自営業が9人。市は23年度、10人の利用を想定していた。担当者は「見込み以上の利用がある。ホームページや関係団体を通じてさらに周知していく」と意義を強調している。

 一方、県内では同市の他に事業を実施予定の市町はない。仕組みが複雑な点のほか、障害者のニーズの不透明さなどが背景にある。県内市町からは「財政的に新規事業に着手しにくい」との声も聞かれる。

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