県民の日なぜ休校ではない? 関東では栃木だけ、2度検討も実現せず... 【あなた発 とちぎ特命取材班】

 「県民の日」はなぜ学校が休みじゃないの-。6月15日が近づくと、そんな疑問の声も聞かれる。関東で県民の日を定める都県のうち、公立校を休校にしないのは栃木県だけ。何かと近隣県の動向を意識しがちな県庁だが、休校化を巡っては独自路線を貫く。経緯や理由を取材した。

 「子どもだけ休みで親が仕事では全く意味がない。それよりも学校で古里の歴史を学ぶ方がはるかに価値がある」。6日、福田富一(ふくだとみかず)知事の定例記者会見。県民の日を休校にする考えがないかを問われ、知事は否定的な見解を示した。昨年の県民の日行事でも同様の主張を自ら切り出し、授業数の減少も理由に挙げた。

 全国で県民の日を定めるのは19都道県。このうち休校とするのは茨城と群馬、埼玉、千葉、東京に関東以外の山梨、愛知を加えた7都県だ。県民の日の制定は条例で決まるが、休校は各都県の教育委員会が規則などで定めている。

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 本県の県民の日は、1985年に条例で定められた。一方、同年に県民の日(10月28日)を制定した群馬県は当初から学校を休みとし対応が分かれた。

 90年代中盤、当時の渡辺文雄(わたなべふみお)知事の下では、企業なども含めた休日化が検討された。地方自治法では地方公共団体が休日を決めることが可能だが「特別な歴史的、社会的意義を有する」などの条件を満たす必要がある。

 今あるのは沖縄県の「慰霊の日」(6月23日)と広島市の「平和記念日」(8月6日)だけ。「自治省(現総務省)の承諾が得られないと判断し、断念した」。当時の県幹部の1人はそう説明する。

 再び検討されたことがある。2001年の県議会。自民党県議の質問に、当時の福田昭夫(ふくだあきお)知事は「保護者や市町の意見を聞き、休校とする可否を検討するよう県教委に要請したい」と表明した。だが実現はせず、現在に至る。

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 県が休校化に慎重な背景には、共働きの増加や3世代同居の減少がある。「子どもが休みでも面倒を見る人がない」との意見もあるという。

 こうした声も踏まえ、今年から柔軟な形で休校を始めたのが愛知県だ。昨年の県政150年を記念し県民の日(11月27日)を創設。11月21~27日の平日のいずれかを学校や自治体の指定で休校できることとし、県は同じ日に保護者が有給休暇を取得できるよう経済団体に働きかけている。

 同県の取り組みについて、福田知事は「家族だんらんの時間が増えるのはあっていい」と語り、「成功には事業者側や産業界との連携が必要だ。(産業界と)議論してみたい」と前向きな姿勢も見せた。

栃木県庁

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