【ルポ】記者、クルーズ船に乗る 多様な料理、エンタメ…あふれる“アフターコロナ”の解放感

長崎を出港するコスタ・セレーナ=2日、長崎市松が枝町

 新型コロナウイルス流行で途絶えた客船の運航が再び活発になり、長崎への寄港も目立つようになってきた。先日、報道向けの乗船体験があり、記者が長崎港から八代港(熊本県)までの半日間だけ同行。豪華で縁遠い存在だったクルーズ旅行が少し身近に感じられるようになった。
 乗船したのは欧州最大級のクルーズ会社、コスタクルーズ(本社イタリアジェノバ)の客船コスタ・セレーナ(11万4500トン)。韓国・釜山を発着点に長崎と八代に立ち寄る。同社はコロナ禍後初の日本寄港先として長崎を選んだ。
 海原を平均時速30~35キロで走る船は、ほとんど揺れが気にならない。乗客は韓国人中心の約1700人。マスク姿は見かけず“アフターコロナ”の解放感にあふれている。
 12階の頂上展望デッキにはスライダー付きのプールがある。子どもたちが水しぶきを上げ、プールサイドで夫婦がくつろいでいる。小さなバスケットコートもある。
 ビュッフェレストランは9、10階。全長290メートルの船体の後方半分を占める。派手な照明や巨大な壁画に一瞬身構えたが、料理は生ハムやパニーニなどいたってカジュアル。モッツアレラチーズをふんだんに使った焼きたてピザがおいしい。韓国人客の好みに合わせてキムチも。順番待ちの行列ができたが席は十分あり、海を眺めながら味わえる。約千人いる多国籍のスタッフは陽気で、カメラを向けるとポーズをとってくれた。船上だが「イタリア」に来た気分だ。
 記者が泊まった客室はシャワーとトイレが付いた一般的なビジネスホテル仕様。ほかにスイートルームやバルコニー付きの部屋もある。連泊ならスーツケースの中身を全て出し、自宅のように過ごすのがクルーズの醍醐味らしい。全1500室のうち100室余りは緊急隔離用として空け、船内感染に備えている。
 夜は1350席のホールでダンスやショーが行われる。「ユー・レイズ・ミー・アップ」など聴き覚えのある歌で記者の気分も上がる。バーの近くにはピアノが置かれ、酔客がダンスパーティーに興じていた。カラオケルームでは30人以上が歌って踊っていた。カジノや映画館もあり、眠るのがもったいない。
 朝になると、フィットネスで汗を流す人たちがいた。免税店でバックや時計、香水などのショッピングも楽しめる。
 クルーズ旅行というと、記者は「高級」「世界一周」を連想していた。今回は3泊4日のチャーターで10万円前後。有料サービスも一部あるが、基本料金に宿泊や食事だけでなく、エンターテインメントやチップも含まれる。頑張って日々働けば手が届きそうなのは意外だった。
 コスタ社の浜岡聡一日本・韓国支社長は「都心のテーマパークに行くのと変わらない金額で経験できる」と気軽さを強調していた。残念ながら九州発着プランはまだないが、目標は「2025年」という。一夜だけでは広い船内を回りきれず、長崎発着プランの発売を楽しみに待つことにしよう。

朝のビュッフェに並ぶ乗客=コスタ・セレーナ

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