大分トリニータ 果敢な仕掛けで得点量産に期待高まる藤本一輝 【大分県】

けが人が続出する大分トリニータが何とか勝ち点を積み上げているのは、この選手の存在が大きい。今季、成長を見せている藤本一輝だ。得点、アシストの数は際立って多くはないが、決定機を多く生み出している。西山哲平GMは「能力があるのは分かっていたが、今季は安定感があり、自分の特徴を出せるようになった」と成長に目を細める。

評価すべきは、自分でこじ開けられると思ったら、迷わずに勝負を仕掛ける強気な姿勢と判断力だろう。アタッキングサード(ピッチの全長を3分割した時に相手ゴールに一番近いエリア)でのドリブルは推進力とキレがあり、相手が2人だろうが3人だろうが、相手の狙いの逆を取るための仕掛けがうまく、勇気を持ってチャレンジしていくスタイルは魅力だ。それを裏打ちする技術とスピードにも自信があり、周りが見えていても、あえて自分で局面を打開してシュートに行く、あるいはクロスにつなげる選択をしている。だからこそ、相手に脅威を与えているのだ。

ボールを持てば迷わずに勝負を仕掛ける藤本一輝

中でも際立つのはフィニッシュまでのイマジネーション。本人は「アドリブ」と一言で片付けているが、ドリブル、パスを受ける身のこなしなど、全てシュートまでのビジョンを描いた上で行っている。20節群馬戦の逆サイドのクロスを頭で合わせた決勝ゴールは藤本にすれば異色だったが、「頭でも得点できるイメージができた」と得点パターンのバリエーションが増えたことを喜んだ。

今季、藤本は10得点を目標に掲げ、苦手だった守備力も強化している。守備時はしっかり自陣深くまで戻り、対面する相手がボールを持てば、体を当てて寄せる。ボール保持者にとって、コースを切りにくる間合いの甘い選手は怖くない。逆に本気でボールを奪いにくる体の寄せ方は嫌なもの。それは藤本自身の経験から知り得たものだ。守備をしながらボールを奪うのは、自分で仕掛けて局面を打開したのと同じ価値だ。守備も計算できて、攻守において献身的な姿勢があるからこそ下平隆宏監督の信頼を得ている。このまま試合に出続ければ、ノルマ達成は近づきそうだ。

今季10得点は最低限のノルマと語った

(柚野真也)

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