生糸の産地として知られる滋賀県長浜市木之本町で、琴や三味線などの和楽器に用いられる糸を繭玉から取る「糸取り」が最盛期を迎えている。同町大音の工房では女性たちが糸取り機を手際良く操り、「カタカタ」と軽快な音が響いている。
賤ケ岳の麓にある「佃平七糸取り工房」では、4代目の佃三恵子さん(71)ら8人の職人が作業に当たっている。岐阜県などから仕入れた繭を70度ほどのお湯に浮かべて、稲穂の先を束ねた小さなほうきでほぐし、35個の繭玉から出た細い糸を「だるま」と呼ばれる昔ながらの座繰(ざぐり)機で1本の糸にまとめていく。
昔は地域内のあちこちで見られた糸取り作業も、今では同工房だけ。佃さんは「コロナ禍で減っていた需要が戻り、今年は注文が増えてきた。いい音色の糸を作りたい」と話す。作業は7月下旬まで続く。