社説:骨太方針 軒並み先送りでは無責任だ

 「使う」話ばかりで財源の手当てを軒並み先送りするのは、無責任が過ぎるのではないか。

 政府が、経済財政運営の指針「骨太方針」を決定した。

 新型コロナウイルス対策で膨らんだ国の歳出構造を「平時に戻していく」と明示した。

 だが、追加歳出の財源確保と国民負担の議論は後回しにする姿勢に終始している。今国会は見送ったが、秋にも衆院解散・総選挙を想定しているからか。

 これでは一段と借金依存から抜け出せなくなる懸念は拭えない。人口減と少子高齢化が加速するこの国の持続可能な将来像は見えてこない。

 財政の「平時化」目標とは裏腹に、新方針には歳出膨張の項目が並ぶ。防衛力強化では、今後5年間に総額43兆円をつぎ込んで「倍増」を図る。「次元の異なる少子化対策」は、児童手当の拡充など3年間の集中的な取り組みに3兆円台半ばの追加予算を投じる。

 多忙さと人材難が指摘される教員の処遇改善も盛り込み、残業代代わりの教職調整額の増額など見直しを掲げた。配置増なども含め、国費だけで5千億円が必要との見方がある。

 問題は、これらの予算の財源確保を曖昧にしていることだ。防衛費は法人、所得、たばこの3税の増税、少子化対策は社会保険料に上乗せを検討している。だが、世論の反発を避けるべく結論を年末以降とし、実施の先送りにも含みを持たせた。

 政府は、徹底した歳出改革で国民の負担増を抑えると強調するが、具体策は乏しい。検討する医療、介護分野の見直しも何を削り、財源を生むかを示さないまま、支出拡大の効果ばかり言い立てるのは不誠実である。

 そもそもコロナ禍と物価対策でさらに緩んだ財政を立て直す覚悟が見えない。国の一般会計規模は、2019年度から5年連続で100兆円を超え、将来税収で返済する必要がある長期債務残高は1280兆円に達する。

 方針では、25年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化の目標を維持するとしたが、その進ちょくの検証を24年度に先送りして逃げを打った形だ。自民党内の積極財政派への配慮が色濃くにじむ。

 これでは「つなぎ国債」を含め、結局は借金頼みが強まり、将来世代に重いつけを回す恐れが大きくなるばかりである。

 成長戦略として盛り込んだ「新しい資本主義実行計画」では、学び直し支援や労働市場改革を掲げた。人材移動を含めて成長産業の強化に軸足を置く一方で、岸田文雄首相が就任時に示した分配強化や格差の是正は一層後退した。

 恒例のごとく骨太方針を国会最終盤に打ち出すのは、議論を避けて既成事実化を図る思惑にしか見えない。国民に課題を隠すべきでない。

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