コロナ以外の感染症流行?5類移行で自宅療養? 市販の風邪薬売り上げ伸びる 青森県内

ドラッグストアの風邪薬、せき止め薬コーナー。3月ごろから、売れ行きが伸びている=14日、青森市のハッピー・ドラッグ勝田店

 青森県内のドラッグストアで、今年春ごろから風邪薬の売れ行きが伸びている。新型コロナウイルス以外で近年流行が少なかった感染症の広がりや、新型コロナの5類移行に伴い医療機関を受診せず自宅療養を選ぶようになった意識の変化など、背景に対する医療関係者の見方はさまざま。青森県でも今後夏風邪が流行する可能性を踏まえ「発症しても慌てずに様子を見て、症状が重いようなら我慢せず医療機関を受診して」と呼びかけている。

 県内を中心に、ドラッグストア「ハッピー・ドラッグ」や調剤薬局を運営する丸大サクラヰ薬局(本社青森市)では、3月ごろから風邪薬の販売が伸び始め、6月時点の実績は前年同期に比べ6割増し。せき止め薬なども前年を上回る販売状況という。営業企画部の工藤正泰部長は「業界全体で、同じように販売が伸びている」と説明する。

 ハッピー・ドラッグ勝田店(青森市)では、スマートフォンで調べて市販の風邪薬を探す買い物客や、調剤薬局への相談が増えている。同店の担当者は「コロナ禍前のように、自分で薬を選んで風邪を管理する意識が戻ってきているのでは」と推測する。

 むつ総合病院(むつ市)の葛西雅治副院長は「新型コロナの5類移行で、若い人の場合は軽症の風邪症状だと病院に行かず、自宅で治そうとする動きが広がっている」と話す。最近は発熱で来院する大人の患者数が落ち着いている半面、小児科で発熱患者の受診が多くなっているという。

 ここ数年、新型コロナの予防策によって、ほかの感染症の流行が抑えられていた。多くの医療関係者が、これらの感染症に対する社会全体の免疫が弱まっていると指摘する。

 県が毎週取りまとめている感染症動向調査によると、発熱やせきなどの風邪症状が出るRSウイルス感染症の患者報告数は4月以降、過去5年平均を上回って推移している。夏風邪の一種・ヘルパンギーナも、5月下旬から複数地域で患者が報告されるようになった。

 青森市の小児科・象こどもクリニックの舘山尚医師は「子どもの発熱患者が、すごく増えている状況ではない」としつつ、RSウイルスについては「本来は1歳未満の患者が多い病気だが、今年は2~3歳児が初めて感染し、症状が強く現れて受診する患者が出ている」と変化を感じている。

 県感染症対策コーディネーターの大西基喜医師は「風邪症状がある人の増加と、(市販薬を利用する)セルフメディケーション意識の高まりという両方の要素が、市販薬の売れ行きにも影響しているのでは」との見方を示す。手指衛生などの予防策に気をつけながら「発症したら慌てず、体調に応じた方法で療養してほしい」と話した。

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