与謝野晶子の直筆短歌披露 七尾で初の企画展

与謝野晶子が七尾で詠んだ直筆の短歌を眺める小林会長(手前)ら会員=七尾市桧物町のギャラリー

 歌人与謝野晶子(1878~1942年)が昭和初期に七尾中心部で詠んだ直筆の短歌が20日、七尾市桧物(ひもの)町ののとしんギャラリー「かわも」で初公開された。金沢市の個人が所蔵する軸で、杉森久英記念文庫活用研究会(七尾市)がゆかりの地で周知しようと展示を企画した。石川近代文学館(金沢市)は、晶子は直筆を多く残したため珍しくはないとしながらも「詠んだ場所で公開するのは意味があり、すてきだ」と歓迎している。

 公開された短歌は「家々に 珊瑚(さんご)の色の 格子立つ 能登のなゝ尾の みそぎ川かな」。七尾市中心部を流れる御祓(みそぎ)川沿いの家に見られた、べんがら格子の美しさを表現した内容で、半折(縦約130センチ、横約35センチ)の白紙に流れるような細い字体でしたためている。

 北陸への歌行脚として、夫の鉄幹(寛)と七尾、和倉温泉を訪ねた1931(昭和6)年1月3、4日に詠んだ18首の一つとなる。

 七尾市出身の直木賞作家杉森久英氏を顕彰する杉森久英記念文庫活用研究会の小林良子(よしこ)会長(85)が2年前に所有者から管理を託され、今秋の国民文化祭の機運醸成へ公開を決めた。

  ●内灘砂丘の歌も

 企画展「珊瑚の色の格子立つ~与謝野晶子 七尾を詠む」(北國新聞社、ラジオななお後援)で披露され、他の17首も印字して並べている。七尾の歌のほかに、晶子が内灘砂丘を詠んだとみられる「遠く見て 金澤城の煙霞(えんか)より ややしろきかな 河北(かほく)の沙丘(しゃきう)」の直筆短冊も展示した。

 与謝野夫妻は七尾入りの前に富山県の宇奈月温泉、金沢市の兼六園(当時は兼六公園)を訪れ、のちに北國新聞に合併された北陸毎日新聞が金沢駅で夫妻に取材した記事もパネルで紹介している。

 小林会長は「展示会場近くの御祓川沿いには『家々に』の歌碑も立っている。直筆を見て詠まれた頃の七尾に思いをはせてほしい」と話した。28日まで。

内灘砂丘を詠んだとみられる「河北の沙丘」の直筆短冊

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