来年3月末閉館の棟方志功記念館(青森市)、最後の大規模展始まる 生誕120年記念特別展

初日から多くの観覧者が訪れた、棟方志功生誕120年記念特別展=20日午前、青森市の棟方志功記念館
巨大な青い鳥が印象的な肉筆画「鷲栖図」

 青森市出身の世界的板画家・棟方志功の生誕120年を記念した特別展「友情と信頼の障屏画(しょうへいが)」が20日、同市の棟方志功記念館で始まった。京都・山口書店を創業した友人の山口繁太郎(平川市出身)宅に描いた襖絵(ふすまえ)「乾坤無妙(けんこんむみょう)」(前期のみ)、多大な支援を受けた岡山・大原家のために描いた屏風(びょうぶ)「御群鯉図(おんぐんりず)」(後期のみ)など青森県初公開を含む28作品131点を展示する。会期は前期が7月30日、後期が9月18日まで。

 同館は施設の老朽化などを理由に来年3月末での閉館が決まっており、県外の貴重な作品を展示する大がかりな機会は今回が最後。小野次郎館長は20日、開幕前の報道陣向け内覧会で「48年にわたって支えてくれた市民、県民への恩返しの場にしたい」と語った。

 前期の目玉となる乾坤無妙は、公益財団法人岡田文化財団パラミタミュージアム(三重県)の所蔵作品。「乾」「坤」「無」「妙」の文字が襖4枚の上半分に大きく1字ずつ揮毫(きごう)され、下半分には飛び散るような墨の横線が描かれている。

 1965(昭和40)年の制作当時、病に冒されていた山口を勇気づけようと、文字は迷いのない筆遣いで一気に描かれ、下半分を埋める墨の線は青、赤、黄、紫の色が混じる。このほか、トイレの扉に描かれた天女の板戸絵、牡丹図の衝立(ついたて)なども並び、志功らしい躍動感と豊かな色彩が楽しめる展示となっている。

 青森県を観光中に特別展の開催を知り、朝一番で駆けつけたという浜松市の松島真一さん(72)は「記念館に来たのは初めてだが、作品から発せられる迫力やエネルギーがすごかった」と感心していた。

 開館時間は午前9時から午後5時。名字が「山口」「大原」の入館者は団体料金で観覧できるほか、7月29日から青森市の県立美術館で開かれる記念展「メイキング・オブ・ムナカタ」との共通観覧券(2300円)を数量限定で販売している。問い合わせは同記念館(電話017-777-4567)へ。

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