太陽光発電設置、売電から「自給自足」型加速 電気料金高騰で導入 雪国・青森県でも効果実感

ゴールド農園の施設に設置された太陽光発電(丸喜齋藤組提供)=弘前市

 事業所や家庭に設置した太陽光発電で、従来のように電気を売るのではなく、自ら使う流れが全国で加速している。電気料金の高騰が主な要因で、青森県内でも消費目的で太陽光発電を設置する事例が出てきた。

 弘前市のリンゴ移出・加工販売業「ゴールド農園」(石岡繁行社長)は2021年、電気料金の削減を目的に、建物の屋上に太陽光パネルを設置した。

 当初から売電は想定せず、電気はリンゴの冷蔵などに使っている。22年4月から1年間の実績をみると、雪が積もる冬期間は発電できないものの、そのほかは発電量が予想値を上回る月が多かったという。

 同社の石郷岡浩幸常務は「1割以上の電気料金削減につながった。最近は電気料金が上がっているだけに効果は期待以上」と語る。導入当時の電気料金などで試算すると、10年以内に「元が取れる見込み」という。

 同社に太陽光パネルを設置するなど、早くから「自給自足」型の太陽光発電を手がけてきた青森市の建設業「丸喜齋藤組」の齋藤太一営業部課長は「太陽光は災害時の非常用電源として機能する上、環境意識の高まりに伴い企業のイメージ戦略を担うことも期待されるようになってきた」と近年の変化を語る。設置には条件があり、全ての建物が適しているわけではないが、パネルの性能が向上し電気料金が高い昨今は「設置効果は高い」とみる。

 脱炭素社会を目指す国は、30年度時点で再生可能エネルギー比率を36~38%と、現状のほぼ2倍とする目標を掲げる。太陽光発電は、住宅の屋根や公共施設、工場・倉庫など適地への最大限導入が呼びかけられ、国や地方自治体も費用補助などを打ち出している。ただ、初期投資や煩雑な手続きなど「まだまだハードルが高い」との指摘がある。

 ゴールド農園では、ほかの施設にも導入したいと希望するが、石郷岡常務は「一番のハードルは投資金額。補助申請の手続きも煩雑で、小さい事業者では対応が難しい」と吐露する。

 丸喜齋藤組の齋藤課長は、脱炭素の潮流について「本県がモデル都市になるビジネスチャンス」と期待を寄せる。県内でも再エネ導入に少しずつ関心が高まっているとし、「もっと魅力的な補助制度があれば県内の導入事例は増えるはずだ」と語った。

 中小企業の再エネの取り組み事例に詳しい任意団体「再エネ100宣言RE Action」(東京)の金子貴代さんは「電気料金高騰を背景に、昨年ごろから自社用に太陽光を導入する企業が増えている。太陽光パネルの価格が下がり、投資回収の期間が短縮していることも近年の特徴」と解説する。サプライチェーン(供給網)が再エネ電気にシフトする流れを見据え、先手を打って再エネを導入する企業もあるという。

 政府目標を達成するには、大企業だけでなく中小企業などを含めた地道な努力が重要-と金子さん。「今後は中小企業の経営者のやる気を喚起する制度が必要だ」と語った。

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