「美方地域の但馬牛飼育」世界農業遺産認定なるか 申請から4年、国連機関が現地調査 7月中に結果

但馬牛に関する展示資料を見る李先德教授(中央)=但馬牛博物館

 国連食糧農業機関(FAO)に世界農業遺産への認定を申請している兵庫県香美町と同県新温泉町の但馬牛飼育システムに関して24日、FAOの調査委員が、両町を訪れた。認定審査の結果は7月中に出る見込みで、地元では認定による但馬牛の知名度アップや観光振興に期待している。

 「人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム」で、両町やJAたじまなどでつくる推進協議会が、2019年に農林水産省を通して申請。新型コロナウイルスによる審査中断などがあり、現地調査が遅れていた。同システムは県内で初めて日本農業遺産に認定されている。

 美方郡では、1898(明治31)年に日本で初めて牛の血統を登録する「牛籍簿」が整備され、黒毛和牛の育種改良で日本を代表する地域となった。認定では、地域の貴重で伝統的な知識システムが維持され、食料生産や農家の生計、農村環境保全などに寄与している点が審査される。

 現地調査委員は、FAOの科学助言グループメンバー、李先德・中国農業科学院教授。通訳らと、JAたじまみかた畜産事務所や棚田、畜産農家など計9カ所を訪問。歴史的な資料や水田と但馬牛飼育の循環サイクルなどを見た。

 新温泉町丹土の但馬牧場公園但馬牛博物館では、野田昌伸副館長の説明を受け、展示を見学。同町切畑の三原野放牧場では、母牛12頭を放す但馬中井畜産役員の中井崇泰さん(29)の案内で但馬牛などを見た。中井さんは説明の後、「畜産農家は認定に期待している」と訴え、李教授から「できるだけ力になろうと考えている」との答えを引き出していた。(小日向務)

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